『ネットテレビの衝撃』志村一隆(書評)
【11月4日特記】 著者の志村さんにいただいて読んだ。
この手の本の命は、1)情報の速さ、2)まとめ方の解りやすさ、であると思う。そして、その2点こそがまさにこの本の「売り」だと言って良いのではないだろうか。
今月(2010年11月)になって発売されたばかりの本だが、その直前9月までの、主にアメリカと日本のテレビと、テレビのコンテンツのインターネット配信の最新の状況をきちんとフォローしてある。そして、下手な価値判断や思い込みもなく現状をまとめることを主眼にしているために、非常に読みやすく解りやすい。
この周辺業界で働いている者にとってはもちろん知らないことのほうが少ないのだが、それでもここまでちゃんと整理された資料は手許にはない。非常に重宝する。
主に「あんなものがありますよ」「こんなことになってますよ」というフラットな記述が多く、放送局に対して「だから、どうしろ、どうすべきだ」という突っ込んだ部分がないところが少し物足りない気もするが、「おわりに」を読んでいるとテレビ局の人間に対して「私にそんなこと聞かないで下さい。それはあなた方次第でしょう」みたいなことを書いたところがあって、「なるほど、仰るとおり」と笑ってしまった。
一方、視聴者に対しては、後半実例の羅列で、読んでいて少し飽きるところもあるが、全体に非常に丁寧な解説書になっており、あまり知られていない裏側の事情も含めてちゃんと調べてちゃんと書かれている印象がある。
そして、帯に書かれている惹句「地デジははじめの一歩にすぎない。お茶の間の主役がパソコンみたいなテレビに交代」こそが著者が一番書こうとしているポイントなのだが、最後まで読むとそのことがなんとなく分かってくるはずである。
読むなら情報が新しいうちに、今すぐ手に入れるのが良いのではないだろうか。
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