『雷桜』業務試写会
【10月4日特記】 映画『雷桜』の業務試写会に行ってきた。
何度も書いているけど、どうも僕は時代劇という奴が苦手と言うか、好きになれないのである。
そもそもなんでわざわざ過ぎ去った時代の社会制度や感覚・思考のパタンに押し込めてドラマを展開する必要があるのだろう?
封建時代の運命(さだめ)がどうのこうのと言われても、現代に生きる僕としてはあまりピンと来ないのである。いや、それよりも、何故そういう形でドラマを描きたいと思うのかがピンと来ないのである。
僕としてはそんな昔の話より現代の話が見たい。いや、昔の武士の世の中の形を借りて実は現代を描いている、なんて反論する人もいるのだが、なんでそんな回りくどいことするのかが解らない。
そして、それに加えて、昔の社会制度や感覚・思考のパタンが中途半端にしか描けていないと、それが気になって前に進めなくなってしまうのである。
例えば江戸時代に「心の病」という発想(や治療法)はあったのだろうか? 単に「うつけ者」としてうっちゃられていただけではないか? そして、「愛してる」という表現は江戸時代にはなかったはずである。
でも、みんなそんなことはあんまり気にならないのだろう。だから時代劇はどんどん書かれ、どんどん映画化されている。いや、まあ、とやかく言う前にとりあえずあらすじを書いておこう。
将軍秀斉(坂東三津五郎)の十七男・斉道(岡田将生)は心を病んでいる。と言っても、病人として扱ってくれるのは直接の家臣くらいのもので、外ではうつけ者として疎まれている。
将軍に愛想をつかされたことが発端となって、実は斉道の母も心を病んでいた。そして、その心の病によって幼い斉道に辛く当たることがあった。そのことが斉道にとってトラウマになっており、さらに、自分も母親の血を引いているのではないかという恐怖感もあって、些細なことで部下に斬りかかるなど荒んだ心を持て余していた。
御用人・榎戸角之進(柄本明)はある時、自分の身を持って斉道を守ろうとした商家出身の瀬田助次郎(小出恵介)を抜擢して斉道の中間とし、以後斉道の世話をさせる。
ある日助次郎から故郷の話を聞かされ、医師から転地療養を勧められた斉道は、気まぐれからそこに行ってみると言う。そして、実際山に入ってみると、果たして助次郎の言った通り、そこには天狗がいた。しかも女の。
これが雷(蒼井優)である。そして、雷は実は20年前に岩本藩士・田中理右衛門(時任三郎)に拐かされた助次郎の妹・遊だったのである。最初の出会いでは草原での斬り合いになるが、やがて2人は禁断の恋に堕ちる──そういう話である。
この1~2年で人気・実力ともに急上昇中の岡田将生と、近年では怪優と言っても良いほどの個性と実力を兼ね備えてきた蒼井優の、さながらジョイント・ショーのような面持ちがある。ともかく2人の魅力は全開である。
加えて画作りがとても美しい。少し引いて人物のサイズは小さめにしながら画面いっぱいに景色を入れ込んだ構図が如何にも廣木隆一監督らしい。「里」と対比した「山」の風景が存分に賞賛されている感じがする。
そして、まあ、禁断の悲恋物語であるので、燃えるだけ燃えて、しかし時代と社会の障壁は容易に越えられず、どこかで何かを諦めるしかない展開にはなる。ただ、そこに辿りつくまでに1つ、そして後日談に1つ、ちょっと驚く展開も仕込まれている。
そのことによって映画は随分引き締まって、途中の幾分単調な印象を忘れさせてくれる。美しい映画である。ただ、最初に書いたように、僕はあまり時代劇には馴染めないタイプなので、是非皆さんの感想も聞いてみたい気がする。
余談だが、池畑慎之介と柄本明の立ち回りという大変珍しいものを見せてもらった。
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