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Friday, October 29, 2010

ad:tech tokyo 回覧実記

【10月29日特記】 ad:tech tokyo に行ってきた。

CEATEC や InterBEE、IMC Tokyo など、新しい機器や技術の展示会には毎年顔を出しているが、その対岸で広告の業界の人たちがこんな催しをしているとは実は去年まで知らなかった。今年初めて顔を出してみた。

とても刺激がある。そう、新知識の吸収とか仕事上のヒントとか言う前に、浴びせられるような刺激がある。

本当は放送局の中でも広告やデジタル技術とは最も遠いところにいる制作マンや報道マン、あるいは広告の仕事の一翼を担ってはいるが凡そ tech 的なものからは取り残されてしまった営業マンなどが観に行ったほうが良いに決まっているのだが、仕方がない。彼らは仕事に追われて余裕がないのだ。

僕らが間を取り持って繋いで行くしかないのである。

このイベントでのいろんな展示やキーノート、カンファレンスなどについての具体的な評価や感想については今回ここには書かないが、いろんなことを見聞きし、いろんなことを感じた。

断片的なことをひとつだけ書いておくと、今回3つ聴講したカンファレンスの中で一番面白かった『新たなるコンテンツ・プラットフォームは我々の未来を変えるか』の中で田端信太郎氏が例に挙げた HERMES の話がその後も妙に印象に残っていろんなことを考えてしまった。

誰でも知っているような有名な話だが、エルメスというのは元々は馬具屋さんだったのである。それが、自動車が発明され次第に普及するのを見て、「いよいよ馬(馬車)は廃れる。このままではウチも潰れる。では、何が出来るか? 革と金属を使って精巧な細工を施す技術と職人はいる」という発想からバッグやベルト作りに転じたと言う。

我々の業態もそれに近いのではないだろうか。

当時のエルメスにも「俺は馬が好きでこの仕事に就いたのに」と嘆く人間もいたのかもしれない。ならば、僕は社内に訊いてみたい。「俺は電波が好きでこの会社に入ったのに」と言う人はいますか、と。

あなたは放送という装置や仕組みが好きでこの会社に入ったのか、番組を作りたくて、あるいはニュースを伝えたくて入ったのか。現在番組を送り出している装置や仕組みと、番組作りそのものと、どちらが放送局の本質なのか、と。

それでも電波が好きだという人にまでとやかく言う気はない。しかし、それは間違いなくかなりの少数派であろうと思う。

幸いにしてテレビは馬(馬車)ほど急には廃れない。一時の勢いは失っても依然として大きなプラットフォームでありコンテナであるはずだ。

重ねて書くが、「俺は電波が好きなんだ。インターネットに乗るような番組なんぞ、馬鹿らしくて作ってられるか!」と言うのであれば仕方がない。でも、きっとそうではないと思う。せっかく作ったコンテンツを、今の世の中ではどうやったら一番広く(かつ効率よく)伝えられるのかを考えて行けば良いのである。

せっかく制作して放送したとしても、そして自他ともに出来が良いという評価であったとしても、それが例えばワールドカップの日本代表戦の裏に来たらそれだけでパーなのである。そういう番組に、例えばインターネットなどの他のルートで陽の目を当ててやるのだから、僕は社内でこれを「制作マンの供養」と呼んでいる。

残念ながらまだ「供養」だけに、大して儲からない。権利処理やエンコード、伝送に掛かった費用を大きく上回る収入を上げる道筋を見つけられていないのは確かである。

そういう時に必ず出てくるのが、「そんなに儲かりもしないのであれば、わざわざ外に出して番組の値打ちを下げることはない」という主張である。

僕はこう反論する:「あんたたちねえ、今まで自分の作った番組がどれだけ売れるかなんてろくに考えもせずに長年番組作ってきたくせに、ここに来てなんで急にセールスの心配するのよ。それはこっち側でこれから一生懸命考えるんですよ。あんたたちは、もし自分に豊かな感性と強い信念があるなら、それを保持して作り続けてりゃいいんですよ」

ひとつの譬え話からこんなに連想が広がってしまった。それも刺激のひとつである。

この田端信太郎氏はなかなか例えの上手い人で、もう一つ印象に残ることを言っていた。

現在の Apple と iPhone アプリのあり方を見ていると、i モードが始まった頃の NTT docomo を思い出す、と。──アプリが i モードの公式サイトで Apple が docomo に対比されるのである。

公式サイトを開いて顧客を効率的に集めようとすると、非常に小うるさい docomo の言うことを一つひとつ聞いて審査を通してもらう必要があった。これが今の Apple 社のアプリ審査と似ていると言うのである。

ただし、NTT docomo のほうが如何にも官僚的な体質で、その分どんな横暴を振るう場合にも非常に丁寧に段取りを踏むので動きが読みやすかったと言う。Apple は突然方針変更して、今までに通していたアプリを落としたりするので、突然頭を抱えることになる。しかし、Apple には今やトップのメディア・ブランドであるという、NTT には真似できなかった魅力と言うか、もはや絶対的な地位がある。

いやあ、聞けば聞くほど面白い話ではないか。

ともかく、ad:tech tokyo というのは、こんな風に山ほど刺激があって、考えが膨らむイベントだった。そのことを書こうとして、ちょっと長くなってしまったけれど。

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