個人としてのクラウド体験
【9月2日特記】 クラウド・コンピューティングということが言われて久しいが、iPhone を使うようになって初めてそのことを実感している。
僕はクラウド・コンピューティングというのは主に企業が省資源、省スペース、リスク軽減等の恩恵を受けるシステムだと思っていた。
個人としてはせいぜいリムーバブル・ディスクに保存するかネット上に保存するかだけの違いであり、ネットに接続しなければ取りに行けないくらいなら手許のディスクに保存してあるほうが面倒じゃなくて良いくらいの認識でいたのである。
つまり、それは個人としてのクラウドの実感がなかったということだ。
それが iPhone で変わったと言うのは、必ずしも iPhone が優れてクラウド的なツールであったからということではない。
それは Gmail を今までよりも駆使し始めたからだ。
Gmail は前から使っていた。しかし、それは基本的に PC のあるところでしか読み書きしないものであった。もちろん携帯でも読み書きできるようにセットはしていたが、それは緊急事態用で、普段は操作性の悪い docomo 携帯で開くことはなかった。それが iPhone のおかげで、PC のない外出先でもどんどん読むようになったのである。
そして、そのことによって、PC のブラウザからインプットしていた Gmail のアドレス帳が iPhone との共有資産になった。クラウドって本当はこういうことなのだと思った。つまり、いろんな PC で共有できるということに留まらず、異なった機器/メディアで共有できるということ。
僕は用心深い男である。自分の PC に入っている大事なファイルはバックアップを常に2箇所以上に取っている。スケジュールを決めて自動でやるのではなく、ファイルを更新するたびに手動でバックアップするのである。
docomo 携帯のアドレス帳も、かつては頻繁に MicroSD にバックアップしていたのだが、今では docomo が預かってくれるシステムがあるのでそれを利用している。しかし、このシステムは正直あまりクラウドという感じがしない。
何故なら、時々自動でデータを吸い上げて docomo のサーバに格納し、携帯を水没させたとか買い換えたとかいう時に初めてネットから戻すというものだから。つまり、手許の機器とサーバの間でダイナミックに連動している気がしないのである。
iPhone で Gmail をいじくり出して初めて、アドレス張(連絡先)のデータがクラウドになった気がする。ネット上のサーバに置いたデータを共有している実感がある。それは会社及び家の PC のブラウザからも iPhone からも書き換え、更新することができる。
手許の機器のデータとサーバのデータを定期的に一致させているのではなく、あっちの機器からもこっちの環境からも、サーバにひとつだけある共通のデータを触っているのである。
仮に何かの不具合で iPhone のデータが消失してもへっちゃらである(ちなみに iTunes と iPhone の同期はほぼ毎日取っている)。
クラウドって、場所が節約できるとか機械を買う必要がないとか、そういうことではなかったんだ──今頃になってそんなことを感じている遅れてきたユーザと笑われるかもしれないが。
Comments