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Monday, August 09, 2010

映画『さんかく』

【8月9日特記】 映画『さんかく』を観てきた。文字通り三角関係の映画。

同じ吉田恵輔監督脚本でも、これは『純喫茶磯辺』ではなく『机のなかみ』の線である。『机のなかみ』のほうは家庭教師をしている女子高生だったが、こっちはなんと同棲相手の実妹、しかも中学生に対してその気になってしまう話。

百瀬(高岡蒼甫)は30歳の釣具ショップ店員。店ではチーフ格らしく、結構偉そうにしている。車が趣味で、400万円かけて改造したバンのリアには自分の肖像画が描いてあるというナルシスト。

佳代(田畑智子)はデパートの化粧品売り場で客の相談に乗りながら化粧品を売っている。よく言えば天真爛漫、悪く言えば単純で、良く言えば面倒見の良い、悪く言えばおせっかいで依頼心も強い29歳。

その2人が同棲して2年。そこへ、夏休みで上京してきた佳代の15歳の妹・桃(小野恵令奈=AKB48)が何日間か同居することになる。

桃は「あ、おんなじモモなんですね」なんて無邪気なこと言いながら結構豊満な肉体、かつ隙だらけ──とは言え、いくらなんでも彼女の妹の中学生に催して惚れちゃってなんてことがあるか!?──と字面だけで読めばそう思うだろうが、これがよく書けた脚本で、百瀬が段々桃にのめり込んで行って、逆に佳代との関係が鬱陶しくなってくる様子が本当によく描けている。

恋をするとみんながみんなストーカー風になって行くのがおかしい。それから、桃に痴漢行為をする男とか、佳代をナンパしかけてやめる男とか、百瀬のアパートのドアに落書きする男とか、直接ストーリーに関係ないところに小あしらいしてある短いシーンが遊びにもなっているし、本筋に対してよく効いているのも確か。

で、僕が何よりも印象的だったのは、1カット=1シーンの長廻しではなく、複数の人物を縦にとった構図である。

2ショットであれば通常は左右に同じ大きさで2人の人物が映るものである。それが、この映画では人物が縦に並べられることが非常に多かった。2人の人物の大きさが異なったり、片方は後ろ姿だったり、2人の人物の奥に、ストーリーとは関係なく通行人が横切ったり・・・。

例えば病院の廊下のソファで百瀬と刑事が座って話すシーン。何もなければソファに90度の角度から、カメラのスペースがないなら少し斜めから撮るところだが、ここでは廊下のずっと手前から2人の人物を縦に置いて撮り、さらに話をしている最中に2人のさらに奥、画面で言えば上のほうを意味もなく看護師が横切ったりする。このことによって、ただでさえ縦構図なのが、より奥行きが深くなっているのである。

釣具ショップで百瀬が後輩店員に小言を言っているときに佳代が訪ねてくる。ここでも店の入口は画面の上のほうにあって、下のほうにいた百瀬が歩いて行って、手前に後輩店員を残したまま奥のほうで2人の芝居があり、そして佳代を追い出して百瀬が手前に戻ってくる。

石焼きピッツァの店で百瀬と佳代が揉めるシーンでも、ここでは百瀬と佳代はテーブルの左右に振り分けられているが、カメラはずっと手前から奥の厨房まで入れ込んで撮っている。百瀬と佳代が揉めると厨房から2人の料理人がチラチラ見る仕種が画面に入っていて、この動きによって、ここでも構図は縦で、そして奥行きがやたらと深くなっている。

百瀬と佳代の家でも、手前の部屋から続く廊下を縦にカメラに収めている。そして手前の部屋から廊下の奥へと人物が移動するのである。ここも奥行きの構図。

百瀬が引越し先で廊下の先にあるトイレに入ってびっくりするシーン、佳代が百瀬の不在の時に部屋に入ってきていろいろやるシーン、佳代の実家の前で2人が、あるいは3人が出くわすシーン──全部が縦で、ひとりは後頭部しか映ってなかったり、奥の人物はその後頭部に隠れていたりする。

ここまでこういう構図が続くのは恐らく意図してのことであろう。なんだか上手く言えないけど、僕はこの縦の構図が、登場人物の人間関係を象徴しているように思う。そう、なんか対等でない感じ。──ちょっと考え過ぎか? そうかもしれない。でも、単純に良い構図であったとも思う。

ともかく話の展開が巧い。台詞が生きている。だから、男と女の、なんともバツの悪い感じが本当に見事に画面に現れている。なんという馬鹿な男、浅はかな女。高岡と田畑がともかく巧い。

筋のうねらせかたも非常に巧みで、「お、これでハッピーエンドか」と思わせておいてもう一波乱あったりする。

そしてぶつっと切れるように終わる。切ない話である。それだけに良い映画である。

今年の邦画は本当にレベルが高い。良い作品が目白押しである。観るべし。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

マダム・クニコの映画解体新書

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Comments

>この縦の構図が、登場人物の人間関係を象徴しているように思う。そう、なんか対等でない感じ。

TBに感謝!

気がつきませんでした。
脱帽です。
こういう視点で映画を観ると、深くなるし楽しいですね。

Posted by: マダム・クニコ | Wednesday, September 22, 2010 at 18:21

> マダム・クニコ様
わざわざコメントありがとうございます。励みになります。
お名前をお書きいただいてなかったようなので、後から分からなくならないために、ブログへのリンクを含めまして勝手に記させていただきました。

Posted by: yama_eigh | Friday, September 24, 2010 at 20:21

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