ドラマW『第三のミス まず石を投げよ』
【7月3日特記】 昨年の末に WOWOW から録画したまま放ってあったドラマW『第三のミス まず石を投げよ』を漸く観た。今年の 8月にも再放送するらしい。久坂部羊原作の医療ドラマである。
僕はこの手のドラマはあまり得意ではない。それは正義でありヒューマニズムであるからだ。
いや、別に僕はひたすら正義を憎みヒューマニズムを嫌って生きているというわけではない(よね?) ただ、一面的なのが好きでないのである。そして、医療のような重いテーマを扱うと往々にして、どうしてもその一面的なところにしか逃げ場がなくなってしまいがちだからである。
そういう意味では、ある種一面的なところに堕ちてはいるが、多面的なトンネルを潜った上でのことであるとも言える、ま、そこそこのドラマだったと思う。
監督はドラマWをたくさん手がけてきた水谷俊之である。この人のことをそんなに凄い監督だと思ったことは一度もないが、でも一方で必ずそこそこ見られるものを作ってくれる監督だと思う。野球で言えば .270 バッターってとこか。
主人公の櫻井貴子(黒木瞳)はテレビ局の制作マンだった父が癌の手術後の合併症で亡くなって以来、OLを辞めて制作プロダクションに再就職し、医療関係の番組ばかりを作っている。彼女はずっと医師を憎み医療を疑って生きてきた。
そこに三木達志という絵に書いたように模範的な医師(小日向文世)が現れる。彼は自ら申し出なければ誰にも判らなかった医療ミスを認め、亡くなった患者の遺族に賠償金を支払ったと新聞記事に出ている。
ちなみに、タイトルにある第三のミスというのがこの手のミスである。
第一のミスは誰にでも判る凡ミス(薬を間違える、体内にガーゼを残したまま縫合してしまう等)、第二のミスは患者には判らないが医療関係者には判るミス。このミスは内部告発で明らかになることがある。そして、第三のミスとは手術をした当人しか気がつかないミスである。
櫻井は三木のような医者がいるわけがないと思う。そして、恐らくそれはもっと大きなミスをカモフラージュするためのものであるという仮説の下、持ち前の強引な手法で三木を追い詰め、そして医療過誤を追及する生特番の準備を進めてゆく。
医療ドラマにTV制作の現場を絡ませたのが成功の一因だと言って良いと思う。これで少し幅が広がって一般人も見やすいものになったのではないだろうか。特番本番の日をクライマックスに持って来るところもよく練られている。
そして個人的には、かつて東京支社勤務時代に僕自身が通っていたビルがロケに使われていたので、それがめちゃくちゃ懐かしかった。
人間の描き方は極めて一面的であり、そして、あまりにきれいなところに落ち着いてしまうのもどうかとは思うのだが、何よりもこの誠実な医者・三木を演じた小日向の巧さもあって、結局のところなかなかおもしろい作品だった。
脚本は田辺満。出演は他に鶴田真由、袴田吉彦、山本圭、池上季実子、松重豊など。
「制作プロダクション アズバーズ」という表記を見て、おお、そんな会社まだあったのか、と驚いた。
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