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Friday, June 25, 2010

テレビの表現

【6月25日特記】 昨夜は皆さん御存知の通り深夜3時台からサッカー・ワールドカップ日本対デンマークの試合があったのだが、日本テレビの放送は随分前から始まっていて、まだゲーム開始までに4、5時間あるにも拘わらず、「まもなく日本代表!」などと言っていたらしい。

4、5時間前なのに「まもなく」と言うのは如何なものか、というのがまず浴びる批判だろう。

ただ、まあ、じゃあ、何分前だったら「まもなく」と言って良いかといえば別に基準があるわけでもなし、「単なる誇張である」「はやる気持ちをそういう表現に込めた」と強弁されると、僕としては明確に反論できない気もするのである。

もしもこのシチュエーションで「まもなく」と言っていけないのであれば、例えば「10年なんて、あっと言う間だ」などという表現も決して使ってはいけない ことになるのではないだろうか。

僕が思うに、一番の問題はそこに説得力があるかどうかだと思う。

10年という月日は誰がどう考えても「あっと言う間」ではない。だけど、例えばいろんな経験を積んで年齢を重ねてきた人物が、ふっと息をつきながら、「10年なんて、あっと言う間じゃよ」などと言うのを聞くと、「ああ、なるほどなあ」と納得してしまったりするわけである。

逆に、「これから10年間無遅刻無欠席で、有給休暇も全く取らずに働いたら課長にしてやるよ」「え、10年も続けてですか!?」「バカ、10年なんて、あっと言う間だ」と続くと、「嘘つけ、あっと言う間のはずがないだろが!」となるだろう。

要は表現が正確かどうかではなく、説得力があるかどうかの問題なのだと思う。

話を最初に戻すと、テレビという表現の場で考えれば、別に引っ張るのも誇張するのもある程度は許される手法なのではないかと思う。昨夜の日テレの例で言うと、誇張の度合いや引っ張る時間の長さが一定の限度を超えているからいけないのではなく、その引っ張り方があまりにも浅はかで子供だましで、全く説得力がないところが問題なのだと思う。

試合が何時から始まるのかはみんな知っているのである。まだ何時間か先である。そこへ「まもなく」という表現を持って来るのはあまりにも稚拙であると思う。それでは反感を買うのが関の山で、決して引っ張ることはできない、というか、テレビに惹きつけておくことはできないだろう。

テレビ的な問題意識からすれば、表現が不正確だからいけないのではなくて、やろうとしていることがあまりに見え見えだからいけないのである。

もしも、開始時間が一般視聴者に知らされていないのであれば、「まもなく」で引っ張っても別に構わないと思う。ただ、もちろん言うまでもないが、その言葉で4、5時間引っ張るのは無理がある。

でも、解ってもらえるだろうか、僕が言いたいのは決して引っ張ってはいけないわけでも誇張してはいけないわけでもなくて、その表現が浅はかなのが一番の罪なのだということである。

むしろ、上手に誇張して盛り上げながら巧~く引っ張って行けたなら、視聴者は「騙された」と言いながら笑ってくれるはずである。そこまでできて初めて本物のテレビマンなのではないかと僕は思うのである。

物の見方が視聴者ではなく制作者に寄っているので、これを読んで不快に思われる方もおられるかもしれないが、僕はここでは一般の視聴者の方にではなく、制作者の皆さんに対して書いているつもりである。

テレビ局に勤めながら一度も番組制作に携わったことのない人間が、番組を作っている人達に向かって書いている文章である。番組を作らせてもらえなかった恨みも若干含んでいるかもしれない。

実は昨夜、twitter のTL上で上記の話題になったのだが、自分の感じることをとても140字以内で書くのは無理だと思ったので、ここに改めて整理してみた。

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