TVの営業マン諸君、今こそ少しは座学もやりたまえ
【5月28日特記】 この2年間で僕は以下のようなメディア(テレビ/インターネット)論、広告論の本を読んできた。
- 『ウィキノミクス』-ドン・タプスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ
- 『明日の広告』-佐藤尚之
- 『テレビ進化論』-境真良
- 『コミュニケーションをデザインするための本』-岸勇希
- 『わたしは、なぜタダで70日間世界一周できたのか?』-伊藤春香
- 『フリー』-クリス・アンダーソン
- 『ツイッターノミクス』-タラ・ハント
- 『使ってもらえる広告』-須田和博
- 『次世代広告進化論』-須田伸
もちろん面白いから読んだという側面もあるが、広告によって成り立ってきたテレビというシステムが、ひょっとするともうこれ以上続けて行くのは無理になったのではないかという危機感を感じてということもある。
それで、ふと気づいたのだが、勉強しているのは実はクリエイタばかりで、肝心の広告営業担当者はあまり勉強していないのではないか?
現に上記の著者を見ると、中には学者や官僚などもいるが、多くは広告会社のクリエイタ(出身者)であるか、あるいは起業家・経営者である。そして、ここには広告営業の現場担当者はひとりもいないのである。
もちろん、本を著した者が勉強した者であって、出版していない人間は不勉強であるなどと言うつもりはない。
ただ、僕の観察するところによると、書いている者の多くがクリエイタであるのと同時に、読んでいる者、そしてそれについて議論を交わしている者の多くもクリエイタであるか、あるいはインターネット周辺の者であり、TVの営業マンは圧倒的に少ないのである。
元TVの営業マンであった僕が考えても、それは仕方がないようにも思う。
だって、「本なんか読んでる暇があったら、お得意さんのところへ顔出して来い」としつこいぐらい言われたのが昔のTVの営業マンである。
そして、お得意さんのところに顔を出してさえいれば簡単に売れたなどということは決してなかったが、それでもお得意さんのところに顔を出して会話をして、相手の志向や条件などを聞き出しながら試行錯誤して提案を繰り返す以外に売る方法はなかったのである(その試行錯誤の中には所謂「接待」も含まれる)。
そういう育ちの社員が、今さら本を読んで勉強しろと言われても所詮無理なのかもしれない。ただ、今こそ勉強が実を結ぶのである。
僕もインターネットを扱う職場に変わった時に、「はあ、勉強したことがそのままストレートに、例えば明日からでも役に立つ職場があったのか」と大いに驚いた記憶がある。そういう意味で新しいメディアの世界は古いメディアの営業の世界よりもずっと単純で解りやすい世界なのである。
我々オールド・メディアは、明らかに新しいメディアの中に一歩足を踏み入れて行かなければ萎んで行くだけになってしまう局面に来ている。
新しいメディアと新しい時代の特性を知らなければ、もはや昔の試行錯誤で売れる時代ではなくなってきているのである。スポンサーの側も、もう昔の試行錯誤は歓迎していないはずだ。
ならば本当に勉強すべきは営業マンなのではないか。現役のTV営業マンに対して、今こそ声を大にして言いたい。「本を手に取ることは、今、営業マンにとって決して恥ずかしいことではないんだよ」と。
クリエイタばかりが危機感を持っていても、この苦境は決して乗り切れないのだから。
Comments