映画『鉄男 THE BULLET MAN』
【5月29日特記】 映画『鉄男 THE BULLET MAN』を観てきた。
残念ながら、1989年の『鉄男』も1992年の『鉄男II / BODY HAMMER』も観ていない。けれど、塚本晋也という名前は鉄男というタイトルとセットで憶えた。
初めて観た塚本作品は1990年の『ヒルコ』だった。それから暫く観てなくて、『悪夢探偵』以降、今回の鉄男まで3回連続で観ている。
最初に観たのが『ヒルコ』という結構エンタテインメント色の強いものだったので解らなかったのだが、恐らく『鉄男』から『悪夢探偵』へとまっすぐ繋がる系譜が塚本監督のメインストリームなんだろうと今日思った。
で、これは以前の『鉄男』の続編ではない。そのままのリメイクでもない。言わば新たな鉄男である。全編英語ではあるが、アメリカ向けにアレンジしたという感じは全くない。多分最初の鉄男も2番目の鉄男もこんな感じだったんだろうと思う。
筋は説明する必要がないだろう。身体が鉄になってしまう男の話である。それだけ知って映画館に行けば良いと思う。一応ストーリーの上では何故そんなことになったかを説明してはいるが、それはそんなに重要な要素ではない。設定はある種のメタファーであり、故にそれ自体が面白いのである。
自分の肉体がだんだん鉄に侵食されて行くところを想像してみてほしい。そこには絶望的な恐怖感があるはずである。映画ではそこに(多分前2作も同じだったのだろうと思うのだが)爆発的な怒りという感情が絡んでくる。
あとは見れば解る。いや、解らないかもしれない。でも、脳に対するものすごい刺激である。良い刺激か悪い刺激かは判らない。しかし、ものすごい刺激であることは間違いない。
カメラがめちゃくちゃ揺れて、一番恐ろしいところがはっきり識別できない。だから余計必死に見ようとして身を乗り出すと、そこに激しい動きが襲ってきて、ものすごいインパクトになる──この辺は『悪夢探偵』と同じだ。コマ撮りもあるし、CGもある。もちろん特殊メイクも。
モノクロではないが色を抑えてセピアっぽく、全体に暗い。それが怖い。そして、暗い画面を見ていると不思議に眠くなる。
いや、泣ける映画であることが良い映画である証拠ではないように、眠くなるからといって悪い映画だということは決してない。
で、短い映画なので、なんだかよく解らないうちに映画は終わる。解ったのは、塚本晋也という人の映像作家としての凄まじさ、俳優としての非凡さ──。
1989年の『鉄男』も1992年の『鉄男II / BODY HAMMER』も観ていなくても、何故それらが歴史に残る作品と言われるのか容易に想像がつくのである。
それほど印象に残る映画であった。
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