入院のお見舞い
【5月9日特記】 明日、東京に出張したついでに、脳の悪性リンパ腫で入院治療中の同僚を見舞うことにした。
一時は、病状よりも死に対する恐怖心から、非常に悪い精神状態が続いていた彼だったが、少なくとも死はそんなに近くにはいないということがはっきり見えてきて、最近は明るさが出てきた。
そういう状況でお見舞いに行けるのは喜ばしいことである。
病気と治療法の特性から、植物や食物の差し入れはできない。お見舞いの品は、本人曰く、館内の有料テレビ他に使えるプリペイドカード、あるいは、もう読んでしまって不要になった本が良いと言う。
そして、彼の奥さんが言うには、本や雑誌と言っても、本人が読みそうなものはほとんど買い与えているので、できるだけ本人が読みそうでないジャンルのものが良いと言う。
僕はどの本を持って行くか考えた。
本当に薦めるのような本なら、それは僕が手許に置いておきたい本だろう。しかし、要返却と言うのでは彼も面倒だろうし、彼自身が不要になったもので良いと言っている。
それで僕は、将来 BOOKOFF に売るために貯めこんであるダンボールの箱の中を覗いてみた。そして、そこから2冊の本を拾い上げた。
- 白岩玄『空に唄う』
- 穂村弘『もしもし、運命の人ですか。』
(僕の投稿した書評にリンクしてある)
ま、そんなに根拠があって選んだ本ではない。なんとなく、である。
ただ、今どき文系/理系という区分にあまり意味があるとは思えないが、それでもその古い分類の中では典型的に理系な彼のために、できるだけ文系的な本を選んだつもりである。そして、入院でもしない限り、およそ彼が読みそうもない本を選んだつもりである。
1)は人の死を扱っているが、ま、人が死ぬ話ではなく死んだ人が出てくる話だし、今の彼なら読んでも問題はないように思う。
2)は性愛の文集(笑)である。ま、こんなのも良いかと。
そして、いずれも自分を突き放して見ることのできる人間が書いた話である。少しでも彼の精神に良い働きをしてくれたらなあ、と思う。
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