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Tuesday, May 11, 2010

二世考、父親感

【5月11日特記】 世の中には親と同じ職業に就く人がいる。そして、その中には単に結果的にそうなったのではなく、かなり早い時期からそれを望み、それを目指してきた人がいる。僕にはその感覚がどうしても理解できなかった。

理解できなかった、などと書くと今では理解しているように見えるが、実のところ今以て理解はしていないのかもしれない。そういう人たちに対する理解は示せたとしても、結局のところ彼らの感じ方は理解できないままなのかもしれない。

だから僕は二世タレントに対しては大抵反感を抱いてきた。歌舞伎役者だけは、そういう世襲社会の中で運営されているので仕方がないと思ってきたが、それ以外の二世タレントについては概ね軽蔑してきた。いや、侮蔑してきたという表現のほうがしっくり来るだろうか。

理解できないからといって否定するのは、安易で、かつあるまじきことである──そういうことは一般論として分かっていながら、僕は親と同じ職業に就く人間に強い反発を持っていた。「親の七光り」で生きて行って何が楽しいのか、と。

そもそも親と同じ職業に就きたいなどと本気で思っている人がいるとは夢にも思わなかったので、結果的に親と同じ職業に就く者は、あちこちへの就職に悉く失敗して仕方なく親の情けで拾ってもらった落ちこぼれか、あるいは青雲の志を持たず、ただ安易な打算から職業を選んだ卑怯者だと思っていた。

しかし、僕も次第に年を取り、様々な人間に接して知見を深めるうちにはたと気づいたのである。

彼らは多分、親を尊敬していたのである。

それは僕には想像できないことであった。僕の家庭環境についてここでつぶさに書くつもりはないのだが、僕にとって父は反面教師以外の何ものでもなかった。父は常に憎むべき存在、倒すべき敵、逃げるべき災厄であった。

父は小さな貿易商を営んでおり、僕が小さい時から僕に跡を継がせようとしていた。僕は父の会社を継ぐことだけは避けよう、父の下で働くのも嫌だし父と同じ職種に就くのも御免だ──と、そんなことだけを毎日毎日思い続けて、策を弄し、あるいは、正面から反旗を翻し、なんとかかんとか成就して今こうしてとある放送局に務めている。

しかし、世の中には父親を尊敬して育った人、父親の仕事に憧れを持った人──そんな人もいるんだ、と僕は初めて気づいたのである。それ以来僕は、二世俳優を蔑む眼で見なくなった。二世議員しかり、二世医者しかり、二世商店主しかり・・・。

人生は捨てたもんじゃないんだ──そんな風に思った。

それは二重の意味でそうなのである。子どもに尊敬される父や父を尊敬する子どもがいるんだということの捨てたもんじゃなさ。そして、それに気づいた僕の人生の捨てたもんじゃなさ。

僕には子どもはいない。いたとしても、まず十中八九、子どもに同じ職業に就いて欲しいとは思わなかっただろう。それは僕が何の職業に就いていても変わらなかったと思う。ただ、仮に子どもがいて、その子が僕と同じ職業に就きたいと言っても、今ならそれを憎悪したりしないだろう。他所の子どもが他所の父親の跡を継ぎたいと言っても、今ならそれを憎悪したりしないだろう。

そんなことはどっちでも良いのである。この年になって漸くそんな風に思えるようになってきたのである。

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Comments

表示としては、やはり2世より二世のほうがしっくりくると思います。そもそも、英語でもniseiじゃないですか。
さて、私のように父親がサラリーマンの場合、父親はまず自分の後を引き継げとは考えません。自分自身がサラリーマンでも、息子に自分の後を継げとは考えないものです。特に、業界自体に将来性がないと思える場合、考えるわけもないのですが。
自分の後を継げ、と息子に命令したり、希望したりする父親が羨ましかったりはするのですが。ま、強制はできないことでしょうが。

Posted by: hikomal | Wednesday, May 12, 2010 at 22:50

> hikomal さん
ありがとうございます。標題・本文とも修正いたしました。

Posted by: yama_eigh | Thursday, May 13, 2010 at 11:17

誰かに依頼されてそしてプロの仕事を返す職人の両親をもった私は、請け負う側ではなく、自ら発信する側の作家になりたい、と思い続けていました。
でも、結局似たような道を歩んでいます。
受け継いだというよりも、血は争えないなぁ、という言葉の方が私の場合はしっくりきますねぇ。

Posted by: yully0021 | Friday, May 14, 2010 at 12:06

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