『ボックス!』マスコミ試写会
【4月21日特記】 映画『ボックス!』のマスコミ試写会を見てきた。
李闘士男監督である。TVのバラエティの世界では一時伝説的な人物であった人である。映画監督デビュー作の『お父さんのバックドロップ』は観たが、ヒットした『デトロイト・メタル・シティ』は見逃した。今作はもうすぐ公開の『てぃだかんかん』に続く4作目である。
今どきこんなまーっすぐな映画、アホちゃうか、と思った。すごいのである。
冒頭、市原隼人のものすごく綺麗なシャドウ・ボクシングのスローモーション・シーン。汗が金色に輝いているように見えるくらい美しい。当然このシーンは後にもう一度使うのだが、これを冒頭に持ってくるところも巧いし、もう一度使うところも適切だと思う。
ひとことで言ってスポ根・学園もの。ストーリーに大したひねりはない。
幼馴染の2人──勉強ができるけれどいじめられっ子の木樽優紀=ユウキ(高良健吾)と勉強はからっきしダメだが喧嘩は強い鏑矢義平=カブ(市原隼人)。小学校時代に東京に転校した木樽が高校生になって大阪に戻ってきて、かたや特別進学コース、こなたスポーツ・コースながら同じ高校の生徒として再会。そこからまた2人の友情が新たに始まる。
カブはユウキの転校直後からボクシングをやっていてかなりいい線行っている。そのカブに誘われてユウキも拳闘部に入部するのだが、天性のセンスと身体能力だけで勝ち続けるカブに対して、全て理詰めだが生真面目で練習熱心なユウキも次第に頭角を現してくる。
しかし、物語はこの2人の直接的なライバル関係で展開されるのではなく、もう一人他校の生徒で段違いに強い稲村=通称「栄養ドリンク」(諏訪雅士)という共通の敵を挟んである。この構造がとても巧いと思う。
そして、カブに憧れて押しかけマネージャーになる病気がちな女子高生・丸野(谷村美月)や、何故かガードばかりを教える監督(筧利夫)、いやいや拳闘部顧問にさせられた女教師(香椎由宇)、そして如何にも大阪のおばちゃんという感じの鏑木の母(宝生舞)など、脇役の配置も的を射ている。
そして、何よりも驚きはボクシング・シーンである。もちろん全てが役者の演技によるものではなく、CGなどの特撮技術を駆使しているのは分かるのだが、それにしてもひとつひとつのカットがやけに長いのである。これは役者も大変だったろうな、と思いながら観ていたら、なんと映画の中での最後の試合の第2ラウンドは1ラウンド=1カットで撮っているではないか! 役者もクレーン・カメラも動きながらの1ラウンド=1カットである。
度肝を抜かれた。そして、アホちゃうか、と思った。
かたつむり、犬、虎などの動物をはじめ、アイスキャンデーの当たりのバー、ボクサーパンツのアップリケなど小物遣いがものすごく巧い。流れる映像を見ながら、ああ、この監督は映画を知ってる人だなあと呟きたくなったりさえする。
淀川の河川敷やら十三の商店街やら、鏑木の家であるお好み焼き屋に置いてあるどろソースやら、大阪らしい風景やら物やら満載である。大阪出身の監督がちゃんと大阪弁を喋れる役者を集めて撮った、大阪の人が見て満足する映画である。
久しぶりにまっすぐでパワフルな映画を観た。
★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。
Comments
鏑木じゃなくて鏑矢ですよ
Posted by: 通りすがり | Sunday, May 09, 2010 23:24
> 通りすがりさん
ご指摘ありがとうございました。本文訂正いたしました。
Posted by: yama_eigh | Monday, May 10, 2010 10:37