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Sunday, March 14, 2010

ドラマW『蛇のひと』

【3月14日特記】 第2回WOWOWシナリオ大賞受賞作・ドラマW『蛇のひと』を観た。

主演の永作博美と西島秀俊、さらに板尾創路、劇団ひとり、奥貫薫と、好きな俳優がたくさん出ているのに惹かれたのであって、シナリオ大賞のほうは実はそんなに期待して観たのではなかった。ところがどっこい、とても出来の良い脚本だった。人間の心の深いところに分け入った作品だった。

大賞受賞作なんだから出来が良くて当然と思われるかもしれないが、こういうのは応募作の中の比較優位に立ったものが選ばれるだけのことであり、逆に言うとあまり実績のない書き手の作品から選ぶ場合、そんなにレベルが高くないのも無理からぬことである。

むしろ、こんなに良い作品が出てくるということは、それは取りも直さず「ドラマW」というブランドの評価の高さを表すものではないだろうか。

今回受賞者となった脚本家は三好晶子。元コピーライターらしい。WOWOWシナリオ大賞はプロ/アマを問わない賞なので既に映像化された実績のある人であっても構わないのだが、彼女の場合はこれが脚本家デビューなのだそうである。

ともすると無駄なくストーリーを進行することに血道を上げる人が多い中、彼女の場合はきっちり無駄を書き込んでいるところに好感が持てる。この無駄が人を描くのである。

喫茶店で頼んだカフェラテのラテアートをスプーンでぐちゃぐちゃにかき回してから飲む女。話を聞きに来た2人が帰ったあと、「煙草を吸うため」と偽って外まで後を追ってきて泣き言をこぼす男。──これらは言わば「とってつけた」シーンである。それぞれの人物は物語の中でそれほど重要な地位を占めてはおらず、ストーリー進行上は余計なシーンなのである。

ところが、こういうシーンこそが登場人物を人間たらしめ、そしてそれがストーリーをスムーズに転がして行く潤滑油となるのである。

また、逆に全ての覆いを引っペがすような形でストーリーを押し込んで行ったりもしていない。ちょっとはっきりしないところを残したままドラマは終わる。その加減が丁度良いのである。その加減が丁度良いときだけ、それは余韻になるのである。

主人公は三辺陽子(永作博美)。とある商社の営業事務である。ある日、部長(國村隼)が自殺し、その翌日から陽子の直属の上司であった今西課長(西島秀俊)が行方不明になってしまう。今西は途中入社だが「会社のエース」と言われるほど仕事のできる男だった。

そして、陽子は副社長に呼ばれ、今西に1億円横領の嫌疑がかかっていることを知る。おまけに内密に今西を探し出す任務を仰せつかってしまう。

いや、これはサスペンスではない。そこからの展開は陽子と後輩部員(田中圭)がふたりで、あまり交友関係が広くなかった今西の知り合いを順番に尋ねて、彼の不思議な過去を探って行く形で進んで行く。

今西はどこでも親切で評判の良い男なのだが、彼が関わった人たちは皆一様に少しずつ不幸になっているような気がするのである。

「夜に口笛を吹くと蛇が来る」──このドラマの冒頭の台詞と同じことを僕らも子どもの頃によく言われた。解ったような解らないような感じで聞いていたこの台詞をとても上手にタイトルにしている。後半の義太夫が絡んでくるところも、その演目を含め見事な設定である。

如何にも老舗っぽい商社の古いビルの螺旋階段とか、高速道路のジャンクションの下とか、なんとも雰囲気のあるシーンが多い。

そして、いろんなシーンで西島を上手(かみて)側に立たせて左を向いた横顔からの台詞をいくつも撮り、あとでそのカットばかり繋げ合わせてくるという編集が凄かった。

ものすごく行き届いていてコントロール感のある演出で、これは一体誰が監督なのかと思ったらエンドロールで森淳一の名前。──そう、映画『重力ピエロ』の森淳一である。

脚本も良かったが、素晴らしい役者たちが揃い、素晴らしい演出家に恵まれ、三好晶子にとってはこれ以上はないようなスタートになったのではないか。

西島秀俊の大阪弁が少し気持ち悪かったが、ドラマWでは久々の秀作ではないかと思う。映画館で上映しても充分に耐え得る作品ではないだろうか。制作協力は ROBOT。

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