『スラムドッグ$ミリオネア』
【3月8日特記】 昨日 WOWOW で映画『スラムドッグ$ミリオネア』を観た。どうしようかと思っている間に見逃してしまった映画だ。
インドの話であるがイギリス映画である。ただ、イギリス映画ではあるがインドで撮影されたインド人の物語である。
もう大勢の人が観た映画なので書くまでもないと思うが、スラム育ちの無学な少年ジャマールがTV番組『クイズ$ミリオネア』に出演し、最後の問題まであと一歩というところまで無傷で切り抜けるが、そこでイカサマの嫌疑をかけられて逮捕されてしまうところから映画は始まる。
果たしてジャマールは最後の問題に挑戦できるのか、そして最後の問題に正解して億万長者になれるのか、という興味が映画を引っ張って行く力になっている。
しかし、それにしてもあまりに単純な映画だったのでちょっと驚いた面もあった。
何と言っても、無学な彼が何故全部の問題に答えられたかと言うとそれはたまたま知ってる問題ばかりが出たからだという設定には呆れてしまった。
ただ、答えが解らない問題も幾つか出ており、それをどうやって乗り切るかという山場を作ってあるし、そもそも彼がどのようにしてさまざまな問題の解答を知るに至ったのかを、ジャマール自身が生い立ちを語るという形で見せて行くという構成が巧い。
それから、知らなかったのだが、この話には原作があったのだそうで、映画化にあたってはかなり変更を加えて行ったようだ。特にギャングの一味になってし まったジャマールの兄という存在は映画オリジナルだそうで、そこら辺のところを考えるとやっぱりこれは脚本の勝利なのだなあと思う。
スラムの描写にリアリティがあるのは現実にスラムに行って撮影したから当たり前といえば当たり前なのであるが、画に力があり、そして出てくるエピソードが如何にもインドのスラム育ちの少年らしい話ばかりで、それも受けた原因であろう。
結局のところジャマールの一途な恋の物語に収斂しており、ちょっと絵空事っぽい感じもしないではないが、とても前向きな感じがして捨てがたい。多分審査員たちはここに惹かれたのだろう。単に既存の映画からの変化を求めたのではないと思う。むしろ単純で力強かった時代の映画への回帰ではないか?
最後に皆で歌って踊ったのはインド映画に対する尊敬の念の表明だと思って良いのではないだろうか?
ただ、僕の知る限り、インド映画ではキス・シーンになると大体唇が触れる寸前に次のシーンに移ってしまうのがお決まりだが、この映画ではきっちり全部が映っており、この辺はイギリス映画なのだなあと微笑ましい感じがした。
そして、映画が終わってからもしばらくあのテーマ曲が脳内を駆け巡っていた。良い映画だった。
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