「キネマ旬報」2月下旬号(2)
【2月8日追記】 このブログではこのところ毎年、キネ旬の1-10位の得点を分解してみるという試みをやっている。何人の審査員が平均何点ずつを投じてこの得点が出来 上がったのかという分析である。
ご存じでない方のために書いておくと、キネ旬の審査は各審査員(2009年度日本映画の場合は55人──対前年比7名減)が1位と思う作品には10 点、2位には9点という具合に総持ち点55点を投じて行く形式である。
で、統計学的にちゃんと分析するとなると分散をはじいたりするんだろうけど、とりあえず簡便で見た目も解りやすい方法として「人数×平均点」という形で表わしてみるのである。1点以上をつけた審査員の数×その平均点である。
これをこのように分解することによって、多くの人に受けたのか一部の人に高く評価されたのか、その映画によって微妙なばらつきが見えて来るのである。
さて、早速その計算結果を並べると以下のような形になった。
- ディア・ドクター
251点=37人×6.78点 - ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ
215点=31人×6.94点 - 剣岳 点の記
188点=25人×7.52点 - 愛のむきだし
173点=25人×6.92点 - 沈まぬ太陽
152点=23人×6.61点 - 空気人形
110点=17人×6.47点 - ウルトラミラクルラブストーリー
105点=15人×7.00点 - サマーウォーズ
104点=18人×5.78点 - 誰も守ってくれない
80点=13人×6.15点 - 風が強く吹いている
72点=14人×5.14点
今回まず驚いたのは、こうやって分解する前の合計得点が第8位と第9位のところでものすごく点差が開いているということ。
確かに今回は審査員数が少な目なので全般に合計得点は少な目だが、それでもやはり点数の低さが目立つ。72点なんかでベストテン入りした映画はこの4年間で初めてである。今年はそれほどに良い映画が少なかった、というのが審査員講評ということになるのだろう。
で、個々の作品の特徴を見ると、一般受け度では圧倒的に『ディア・ドクター』、思い入れ度ではこれまた圧倒的に『劔岳』ということになる。ふーん、ちょっ と意外。
僕が高く買っていた2本、『愛のむきだし』と『空気人形』を見ると、前者は予想通り思い入れ度が高い。でも、25人から点が入っているのも大したものだと思う。後者は僕にとっては2009年のベストだったのだが、一般受け度も思い入れ度もともに不足していたようだ。これはとても不思議。
不思議と言えば、『サマーウォーズ』はアニメ嫌いには無視されてもアニメに理解のある審査員が高得点を投じてベストテンに入ってくる、というのが僕の読みだったのだが、結果は逆で、個々の特典は高くないが多くの審査員が投票したという形になっている。
そして、何と言っても楽しいのが『ウルトラミラクルラブストーリー』の偏向ぶりである(実は僕もその偏向した人間の一人であるw)。これが今回のこの分析の目玉と言って良いだろう。
まあ、自分でやっていて言うのも何だが、こういうのも却々面白い試みである。ちなみに、前回、前々回、前々々回と比較してみるのも面白いかと思う。来年もやってみたい。
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