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Sunday, February 14, 2010

映画『ボーイズ オン・ザ・ラン』

【2月14日特記】 映画『ボーイズ オン・ザ・ラン』を観てきた。

主演は銀杏BOYZのボーカリストであり、田口トモロヲ監督の『色即ぜねれいしょん』でヒゲゴジラ役をやっていた峯田和伸である(その前に同じ田口監督の『アイデン&ティティ』で主演していたらしいが生憎これは観ていない)。共演はケラリーノ・サンドロビッチ監督の『グミ・チョコレート・パイン』でマドンナ役を務めていた黒川芽以である。

そぞろに魅かれるではないか。

と言うのも、『色即ぜねれいしょん』はみうらじゅん原作の、『グミ・チョコレート・パイン』は大槻ケンヂ原作の、ともに青春映画の佳作であったからだ。そういうところからもなんとなく期待感が高まる。

この『ボーイズ オン・ザ・ラン』の原作漫画は大ヒットしたらしいが、僕は全く知らなかった。主人公が29歳であるとは言え、これもまた青春映画と呼んで良いのではないだろうか。

本当に情けない男を描いているのだが、この並外れた情けなさが全ての読者(観客)の目に並外れた普遍性を訴えかけることができるかどうかが鍵だろう。多分、コミックスではそれに成功したのだろう。さて、映画はどうか?

(ここで書くのもなんですが、今回は少し内容に触れすぎている嫌いがあるので、これからご覧になる方は、以下はお読みにならない方が良いかもしれません。いえ、ストーリーの結末を明かしてしまっているというわけではないのですが、ちょっといろんな点に触れすぎているので…)

映画でもかなりの部分成功している。

監督は、これまた僕が全然知らなかった人なのだが、劇団ユニット「ボツドール」の座付作者であり岸田国士戯曲賞受賞者の三浦大輔である。この映画が劇場用長編デビューとなる。しかし、不慣れな中いきなり原作ものというのは少し窮屈だったのではなかろうか──画面にそんな様子が少し表れていたような気がする。

主人公は田西敏行29歳(峯田和伸)。フーゾクを除けば童貞である。ガチャガチャのメーカー卸である中小企業「斎田産業」に務めていて秋葉原回りの営業をやっている。同じ会社の植村ちはる(黒川芽以)に恋心を抱いているが、どうやって接したら良いかも分からない。

そこにライバルの大企業「マンモス」の営業マン・青山(松田龍平)が現れ、田西に親切めかして近づいてきて、結局恋も仕事も全部奪って行く。この松田龍平がまあ見事な嫌われ役を演じていて、本当に憎々しい。

で、田西は一念発起して青山への復讐を誓い、ボクシングを習い、身体を鍛えて、ついにマンモスに殴り込みをかけるのであるが、まあ、そうそう巧く倒せるもんじゃない。そういう切ない話なのである。

最初は巧く行きかけたちはるとの恋も、途中からは田西がどんなに誠意を見せても木っ端微塵に拒まれる。この黒川芽以が良い。今いちイケてないくせになんとなくそそるところが良いのである。

他にも、最初は飲んだくれの役立たず社員だったのに途中から田西にボクシングを教える鈴木さん(小林薫)とか、ぼーっとした2代目風でありながら毅然として田西をかばう斎田産業社長(リリー・フランキー)とか、ちはるの隣人であり店では24歳ということになっているソープ嬢しほ(YOU)とか、登場人物がいちいちチャーミングである。

ただ、んー、なんだろう、映画としては少し何か足りない気がする。その辺がやはりキャリアの差なのだろうか。

田西の車のダッシュボード上に置いてあるガジェットとか、風邪で寝ていたちはるの部屋に乱雑に散らかったゴミとか部屋干しのブラとか、あといろんな登場人物でチラ見えしたり透けてたりする下着とか、そういう細かい描写に神経が行き届いた感じはあるのだが、これは多分原作にあった構図なのだろうなあと思う。

──そういうことに想いを馳せると、三浦監督にコミックスの原作をやらせたのは結局少し窮屈な思いをさせたのではないかという気がしてきたのである。

しかしそれにしても、台詞も良かったし画も結構良い構図があったと思うのだが、何か少し物足りない気がするのはどうしてなんだろう? 原作10巻のうち5巻までしか映画化できなかったからだろうか?

ああいう風にぷっつりと切り落としてしまうような終わり方は、あれはあれで良いと思う。ただ、僕の感じた非常に細かいことをひとつだけ書くと、田西が全力疾走するシーンに銀杏BOYZのテーマ曲がかぶってきて、そこでカットアウトしてスタッフ/キャスト・ロールになるわけだが、僕は画はそのままで、どこまでもどこまでも全力疾走し続ける田西の映像にスタッフ/キャストをスーパーすれば良かったのではないかと思う。

──そういうことでも終わり方の印象は随分違ってくるはずだ。

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まあ、あんまり細かいことで文句をつけても仕方がない。良い映画だったし、この監督の次回作には大いに期待して良いのではないだろうか。

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さて、映画館の片隅にガチャガチャが置いてあるから何だろうと思っていたら、これは映画の中に登場した大ヒット作「恋の48手くん」もどきの商品を実際に売っているのである。これは欲しいじゃないか!

でも、これ買った後どうしようか、と悩んでいたら横からすーっと現れた兄ちゃんが無造作にガチャガチャ回して買って行ったので、釣られて買ってしまった。

それがこの写真である。何とも言えずおかしい。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

アロハ坊主の日がな一日

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