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Sunday, December 13, 2009

映画『パンドラの匣』

【12月13日特記】 映画『パンドラの匣』を観てきた。冨永昌敬監督。これは結構拾いものの映画だった。

『パビリオン山椒魚』の時はちょっと荒唐無稽に過ぎるような気がしてパスした。その後2本も撮っていたのは知らなかった。

だから、この監督に興味があった訳ではない。また、『ヴィヨンの妻』の評でも書いたように、僕は太宰文学には造詣も嗜好もない。今回見たのは仲里依紗が見たかったから――こちらのほうは期待通り魅力溢れるキャラになっていて大満足であった。

主人公は利助という青年(染谷将太)。結核を患い、終戦の日に喀血して、とある山中の健康道場で療養することになる。ここでつけられたあだ名が“ひばり”。

寮生も看護婦も、全員が本名ではなくあだ名で呼ばれていたり、自分で自分の体を摩擦する体操とか、看護婦がブラシで患者をこする療法とか、「がんばれよ」「ようし来た」というお決まりの応答とか、まことにユニークな施設である。

で、このユニークな施設でのユニークな体験をまことにユニークな映像に収めた作品なのである。映像のリズムもトーンも一切乱れることがない。見ていてちょっと惚れ惚れするような面白い画なのである。

本当に印象深い撮り方である。あの時代を切り取っているようでもあり、どの時代でもなくどこでもない場所を映し出しているようでもある。

道場の廊下をゆっくりと(恐らくはレールの上を)滑りながら部屋の中を追うカメラ。寄って行くときの本当にゆっくりゆっくりしたリズム。上から撮ったり下から撮ったり、長く回したり、ころころ切り替えたり。そして多用するアップの角度がなんとも言えず良い。

布団部屋でひばりと看護婦・マア坊(仲里依紗)が絡むシーンで、顔のアップを次々とカットを変えて、狭いスペースで役者を動かして角度を変え、音声をダブらせ、会話の最後に短い効果音を載せ――そういう取組が本当に面白い。音声は今どき珍しい完全アフレコなのだそうである。

そして、配役が良いではないか。17歳とは言えキャリア充分の染谷将太、そして『純喫茶磯辺』で目覚しい演技を見せてくれた仲里依紗。染谷の母親役には僕が愛してやまない洞口依子。看護婦長役に川上未映子(これは見事なヒットだった)!

退院したくせに何度も遊びに来る伊達男に窪塚洋介。あと、ふかわりょう、小田豊、杉山彦々、KIKI――これらの人たちがなんとも不思議な空間をプロデュースしてくれた。そう、演技と言うよりもまさにプロデュースという感じだったんだな、これが。

で、なんだったんだと言われると、確かになんだかよく分からないお話かもしれん。だが、このひばりという青年の自意識過剰ぶりは、僕にとっては自分に共通するものとしてまことに共感の持てるものであった。

世間の評価はそんなに高くないのかもしれないが、不思議に魅力ある映画だった。

監督自身の言っていることが面白い。

  • ひばりの自意識過剰な手紙は、ブロガーのノリツッコミと同じだ
  • 死と隣合わせにいながらも、お互いアダ名で呼び合う世間から隔絶した健康道場は、ある意味、ユートピア。学園モノと捉えてよいのでは?

太宰の原作がどうであったかは知らない。でも、この監督のこの解釈、この感覚はかなり秀でたものではないか? 今後の作品をマークする必要がある。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

アロハ坊主の日がな一日

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Tracked on Tuesday, December 15, 2009 12:59

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