耳栓発見
【12月2日特記】 今出張で東京のホテルにいるのだが、ひげを剃ったり歯を磨いたりしているとき、ふいに洗面道具の中に耳栓が入っているのを発見した。
考えてみればここ10年くらいは入れっぱなしになっていてほとんど使ったことがないのだが、昔は耳栓は出張に必携の道具だった。
というのも、昔は出張であれ、系列や民放連などが実施する泊まりの研修であれ、2人1部屋というのが基本だったから――。
下手すると、その日に初対面のよその会社の人と同部屋に押し込まれた。そして、そういうとき、その同室のオヤジが往々にして信じられんような大いびきをかくのであった。
僕は若いころ寝つきが悪かったので、同室の人が先に寝入ってしまうのが常で、それに加えて大いびきなんぞを聞かされたら朝までほとんど一睡もできなくなってしまう。
だから、その防衛策として、耳栓は常に旅行用具の中に収めていた。少しでも眠るためには必須のアイテムなのであった。
さすがに今ではそんなことはほとんどなくなった。
イベントの運営などで地方や海外のホテルに宿泊する場合を除けば、ほとんどツインに入れられることもなくなった。少なくとも初対面のよその会社の人と一緒というのは今ではあり得ない。
そして、そういう変化は宿泊だけに起こっているわけではない。
昔は上司と2人で出張に行くと、まあ、ホテルはできることならばシングルにしようという意識がお互いにあった(もっと昔にはツインが当たり前の時代があったのかもしれない)が、基本的に出張中の全行程が2人でセットになっていた。
上司は大抵「一緒の飛行機で行こうよ」とか「新幹線の切符、俺のも取っといて」などと言った。まあ、今でもその辺りはフツーと言えばフツーなのだが、でも、今なら同じ列車や飛行機にそれぞれ勝手に予約して別々に乗っているというケースがある。昔はそんなことは考えられなかった。
仕事が終わってからも、得意先との会食等がなければ、当然上司と2人きりで食事に行き(まあ、そこまでは今でもあるが)、その後は上司がもう1軒飲みに行こうと言えばそれに従い、ホテルの部屋で飲もうといえばそれに従い、風呂入って寝ようかと言えばそれに従った。
上司が「この後、俺ちょっと行くとこあるから」などと言ってくれると晴れて自由放免になるわけだが、上司のほうも部下と飲むのは仕事の一環と心得ているので滅多なことでそんなことは言わなかった。むしろ「この後、俺ちょっと行くとこあるからお前もつきあえ」と言われるのが関の山だった。
今ではむしろ上司も部下もお互いあまり干渉しないように気をつけ合っている。いや、気を遣っているのは上司のほうで、部下のほうは「じゃあ、この後、僕約束してるんで」などと脳天気である。
ことほど左様に時代は変わってきている。で、いつのまにか僕自身も時に信じられんような大いびきをかくオヤジになっていた。
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