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Sunday, November 29, 2009

映画『沈まぬ太陽』

【11月29日特記】 映画『沈まぬ太陽』を観てきた。あまりに良くできているので驚いた。長いかなと思われた3時間の上映時間も、見終わってみればむしろよくここまでコンパクトにまとめたものだという感慨に変わった。

そう、特に見事なのは脚本である。一体この脚本は誰が書いたのだろう(その予備知識もなく見に行ったわけだが)と、観ている間ずっと気になっていたのだが、最後のスタッフロールのほとんど冒頭に「脚本・西岡琢也」の文字を見て納得。

勝手に新進気鋭の脚本家だと思い込んでいたのだが、いや、やはりこのくらいの実績も経験もあるベテランでなければこの脚本は書けなかっただろう。

アヴァンタイトルで御巣鷹山とアフリカの画を交錯させ、この映画は暫く2つの時間軸で走るぞという宣言をする。非常に手際が良い。そして、そのアフリカがなかなか現代の日本と繋がって来ないのだが、終盤になって漸く繋がってストンと落ちる。

台詞回しに不自然さがない。ストーリー展開にも無理がない。そして、これは原作の力かもしれないが、やたらと人数の多い登場人物がきっちりと描き分けられていて分かりやすい(恩地とか行天とか珍しい苗字ばかり出てくるので却って憶えられる)。これ、無理やり2時間の映画に仕立ててたら、人物の描き方はもっと浅くなっちゃったんだろうなと思う。

エピソードは原作より相当削らざるを得なかったはずだが、見事に再構築されて全体として調和の取れた展開になっている。本当に素晴らしい脚本だ。

そして、文字通りのオールスター・キャスト。出てくる人出てくる人、みんな名前を知ってる役者だ。それぞれが主演であっても何の不思議もない。そして、そのひとりひとりの役者が見事に適材適所で、それぞれが立派な働きをしている。

行天役の三浦友和がやっぱり際立っていた。『台風クラブ』以降、ああいう一種の「悪役」をやらせると彼より巧い役者はいまい。そして、死んだはずの山田辰夫が出てきたのも驚いた。宇津井健ってもっと下手糞な役者じゃなかったかと呆然とした。ほかにも香川照之とか大杉漣とか木村多江とか戸田恵梨香とか、名前を挙げだすときりがない。

その超豪華なキャストに加えて、世界各地のロケ、昭和の時代を再現したセットなど、半端じゃない金の掛け方である。

世の中にはすぐに「金さえ掛けりゃ良いってもんじゃない」みたいなことを言う人がいるが、作品に金を掛けることは作品作りに於いてものすごく大きな要素である。金が使えるということは作り手にとってとても幸せなことであるし、作品に金をつぎ込むことはとても勇気の要ることである。ここまで金を掛けたスタッフに心から敬意を表したい。

監督の若松節朗という人は全く聞いたこともなかったのだが、共同テレビの人らしくて、今年60歳である。やっぱりこのくらいの年齢の人が描くべき話なんだろうね。

僕は山崎豊子にまるで興味はないし作品を読もうと思ったことさえない。映画は原作ものよりオリジナル脚本が好きで、少しでも過去の時代を描いたものより今現在を舞台にした映画が好きだ。そして、気を衒った作品が好きでオーソドックスな映画はあまり好きではない。

だから、もし僕が映画賞の審査員ならこの映画に投票はしたくない。でも、この映画が今年の映画賞のうちのいくつかを受賞してしまっても、それは仕方がない気がする。

貶しどころが見当たらない作品なのである。あってもほんの枝葉末節──例えば、明らかにCGだと判る機影や動物があったとか、休憩のタイミングとしてはあそこで良かったのか、とか。

ただ、一番最後に出てくる製作委員会からのメッセージ──3時間の大作で充分な感動を与えた後に出てくるあれは、全くもって無粋で余計なものだと思ったのだが、まあ、世の中にはああいうことを声高く述べたい人もいるんだろうなあ、きっと。

何か賞は取るでしょう、きっと。それに値する作品であると思った。

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