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Wednesday, November 25, 2009

『食堂かたつむり』試写会

【11月25日特記】 『食堂かたつむり』の試写会に行ってきた。

おいしいものを食べると幸せになれる、どころか、奇跡まで起きてしまう──この映画はそういうお伽話である。だから、お伽話なんて、と言う人は最初から見ないのが良かろうと思う。

小川糸という人の原作を読んでいないので、原作からしてこういうメルヘンのタッチだったのかどうだか判らないが、多摩美術大学出身の富永まい監督の手によってかなりキュートな作品になっているのは確かだ。

冒頭から暫く、主人公の倫子(柴咲コウ)の生い立ち(生まれてから、家を出て料理家を目指し、同居していた男に全財産を持ち逃げされて故郷に帰ってくるまで)を紹介するシーンが続く。

歌に乗せて、キッチュな食物の絵満載のCGと実写のコラージュによってコマ撮り風に、電子紙芝居風に、てきぱきと簡潔に、と言うかものすごく単純化して展開して行くのだが、これが可愛いと同時に手際が良い。

この冒頭の展開はかなり引きがある。そして、その後は通常の撮り方に戻るのだが、ときどきわざと本物らしくないCGが入れ込んである。

倫子の周りにはいろんな人たちがいるのだが、その誰もが倫子の料理を食べると幸せな気分になり、そして奇跡が起こる、というのが筋のほとんど全てである。

このことが信憑性を得るためには、作っている過程が紹介される料理がともかく美味しそうであることが必須になってくるが、それは見事に達成されている。それは映し方の工夫による所謂シズル感であるというよりも、不思議な材料の取り合わせによるレシピそのものが持つ魅力なのだろう。

そして、幸せや奇跡が訪れると、画面をあのキッチュな食物の絵が動く縁取りとなって飾るのである。これが一種の「決め」になっているのだが、下手するとくどくなってしまうところだが、洗練されたデザインで逆にきれいに決まっている気がする。

また、人間は他の動物を食べて生きているのだという、当たり前だけれど描きようによっては殺伐としてしまう事実を、まさに上手く料理して映画に入れ込んであるのにも感心した。

数ある共演者の中では田中哲司と三浦友和の巧さが特に目立った。

そして、なによりもこの映画の成功に寄与したのは音楽を福原まりに任せたことではないかと思う。shi-shonen や Real Fish の頃から好きなアーティストだったが、まさにこの映画にはうってつけの人選ではなかったか。

良い映画である。ただ、もうひとつ何らかの工夫なり趣向なりがあったら、それこそ何かの映画賞の候補に手が届くところまで行ったかもしれないのに、というちょっと心残りな面は正直言ってある。見ているうちに少しダレる面がある。少し息切れ感が出てくる。

例えば、冒頭で駆使したCGや音楽をもっと派手に全面展開する(そうすると『嫌われ松子』になってしまうのかもしれないが)とか、なんかそんなことで観客を驚かせたり気を惹いたりするようなものがなくてインパクトに欠けると言うか、ほんわかしてても構わないのだがもう少しジャンクな感じでも良いのではないかとか、全体に良い出来であるだけに「あと何が足りないのだろう?」とついつい考えてしまうような映画だった。

次回作にはもっと期待できるのではないか。センスの良い監督である。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

ラムの大通り

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