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Tuesday, November 03, 2009

映画『風が強く吹いている』

【11月3日特記】 映画『風が強く吹いている』を観てきた。見ようかどうしようか迷っていた面もあったのだが、「三浦しをんの原作に非常に忠実に作ってあって面白い」という信頼できる知人の映画評に押されて見に行った。

ご存じない方のために書くと、陸上競技では三流の寛政大学の、しかも碌に経験もない寄せ集めの連中が、補欠もいない10人ギリギリのメンバーで箱根駅伝を目指し、見事に出場し、かつ大活躍する話である。

しかし、あれ?冒頭のシーンからして違っているではないか。ハイジ(小出恵介)とカケル(林遣都)の出会い方からして違うのである。その後も、これは原作をかなり書き変えてある。

陸上部駅伝チーム10人のキャラクター設定は活かしたまま、まあ2時間程度に収めるためというのが一番大きな理由なのだろうが、個々のシーンやストーリー展開はかなり変えてあった。でも、上手に書き変えてある。監督の大森寿美男自身による脚色である。

原作を読みながら、これを映画化するとしたら主役の蔵原走(クラハラ・カケル)を演じられるのは誰だろうと考えた記憶がある。結局適当な人間は思いつけず仕舞いだったのだが、林遣都ならなるほどと頷ける。

『バッテリー』では野球のピッチャーを、『ダイブ』では高飛び込みの選手を演じるなど、非常に引き締まった肉体に恵まれた若手俳優ではあるが、決して筋肉バカには見えない。

あまり活舌の良いほうではなく、台詞は少し噛み気味/舌足らずに聞こえるのだが、それでも知性を感じさせるのはあの眼である。とても魅力的な眼をしている。

そして、その眼を狙って画面からはみ出しそうなほどのどアップ(小出と掴み合いになるシーン)を撮ってみたり、走っている選手たちが横から光の当たったところを通り過ぎるシーンを作ってその光をスポットライト代わりにして10人に順繰りに焦点を当てたり、カメラワークも却々巧みである。

映画『奈緒子』を観た時に気づいたのだが、走っている選手を撮るには2つの方法がある。──走っている姿を横から撮るか、正面から(あるいは背後から)撮るかである。

横に撮るとスピードが強調され、縦に撮ると距離感が強調される。選手の表情を捉えるのであれば正面からである。走りを強調したければ画面を横切らせれば良い。横に撮れば疾走感が出るが、縦に撮ると力感に溢れ、精神性が宿る。

この映画は圧倒的に縦のアングルを多用していた──冒頭のシーンもそうだったが、特に前半はカケル以外の走るシーンはほとんどが縦ばかりだ。そして、箱根駅伝本番ではさすがに横の展開が増えてくるが、クライマックスになるとやはり縦だ。とても巧いと思った。

そして、一時的に無音にする、ノイズを全て消して足音だけ響かせる、足音だけに音楽を被せるなど、音の仕掛けも多彩だった。

音楽は千住明だったのだが、これが如何にも劇伴らしい劇伴で、盛り上げに非常に有効であったと思う。

10人のうち上記2人以外では斉藤慶太・祥太の双子とダンテ・カーヴァーの黒人(なんという安易なキャスティング!)くらいしか名の売れた役者はいなかったのだが、皆一様に良かった。それから、僕は今まで小出恵介を良いと思ったことはなかったのだが、この映画では見なおした。あと葉菜子(ハナコ)役の水沢エレナも印象強かった。

さて、原作を読んでいない人がこの映画を見たらどうなんだろう? 「そんなに巧いこと行くかよ」という気がするのかもしれない。そういうこともあって、映画が始まった時にはすでに竹青荘の住人たちは毎朝5キロ走っていたという設定に変えてあった。

よく気の回る脚本・監督だと思った。ものすごい直球の作品なのだが力み過ぎず、良い出来だったのではないかと思う。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

soramove
アロハ坊主の日がな一日

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