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Sunday, October 11, 2009

映画『のんちゃんのり弁』

【10月11日特記】 映画『のんちゃんのり弁』を観てきた。

緒方明監督の新作である。長編デビュー作の『独立少年合唱団』(2000年度キネ旬8位)は見ていないのだけれど、その後の『いつか読書する日』(2005年度キネ旬3位)でぶっ飛んだ。恐らく僕がこのブログを始めて取り上げた映画の中で最も壮絶な日常ドラマだったと思う。

で、今回の作品は元々が漫画であったということは知らなかったのだが、CBC中部日本放送がかつてお昼の「ドラマ30」枠でドラマ化したことがある。記憶では確かそこそこの視聴率だった。帰宅して調べてみたら主演は渡辺典子だったらしい。続編も制作されている。

そういう縁なのだろう。この映画の製作委員会にはCBCも参加している。

主人公は「のんちゃん」ではなく、のんちゃんの母親の小巻(小西真奈美)である。彼女は「作家を目指す」と言いながら事実上ニート状態の夫・範明(岡田義徳)と遂に離婚しようと決断して、娘・乃里子(佐々木りお)の手を引いて実家に帰る。

父はすでに他界していて、実家には着付け教室を営んでいる小うるさい母(賠償美津子)がひとりで暮らしている。

生まれ育った街だけに幼馴染や昔からの知り合いが多い。近所の八百屋のおじさん(徳井優)や、のんちゃんを預けた保育園の保母さんで元同級生の麗華(山口紗弥加)、中学時代に思いを寄せていた(今は実家の写真館を継いでいる)建夫くん(村上淳)もそうだ。

そんな人たちにも励まされながら自立しようとするが、就職面接を受けに行ってもほとんど相手にもされない。

考えてみたら今までのんべんだらりと専業主婦をしていたので、娘に美味しいのり弁を作ることぐらいしか特技がなく、他に何の取り柄も経験もない。

そんな小巻がある日、居酒屋ととやの主人・戸谷(岸部一徳)と知り合ったのがきっかけで一念発起して弁当屋を目指す話である。

この映画は言うならば「小さな作品」である。大きな感動もカタルシスも味わえない。ただ、細かいところまで非常に神経の行き届いた作品である。

例えば、建夫くんが去って行く小巻を呼び止めて、振り向いたところを写真に収めるシーン。振り返ったところで1回目のシャッター音。そして、その2~3秒後に2回目のシャッターを切ると、小巻の表情は1回目の少し緊張した感じが緩んできれいな微笑みになる。

──そんなシーン、シチュエーションはとても僕には思いつけない。すごい脚本だと思った(脚本は緒方明と鈴木卓爾との共同)。

小巻がいよいよ弁当屋開業にこぎつけて、初めてののり弁を作るとき、海苔をちぎりながら泣くシーンも良い。

この映画では海苔をちぎる音が少し誇張して大きな音で録音されている(擬音かもしれない)。その音に小巻のすすり泣く音がかぶって行き少しずつ激しくなる。そしてカメラはそろりと小西真奈美の顔に寄って行く。

全般にカットは細かく切らず、役者たちに長めの芝居をきっちりとさせている。岡田義徳のダメ男がめちゃくちゃに巧い。のんちゃんの子役も自然な演技で可愛らしい。

この映画の良いところは、努力すれば報われるんだという一直線の図式を描くのではなく、所謂アラサー世代のダメなところ、成熟できていない面をちゃんと描いているところである。

中学以来「焼けぼっくりに火がついた」状態になった建夫くんの、ストーリーの中での扱いがとても良い。うん、人生そんなにドラマチックにハッピーエンドにはならない。ありそうだよね、こういう結末。うん、それで良いんじゃないかな。

脚本も演出も、役者たちも、笠松則通のカメラも、本当に肌理の細かい見事な出来だと思う。

興行的には多分あまり成功とは言えない感じで終わるんだろうけど、例えば将来映画監督を目指している学生さんなんかには是非とも見てほしいなあ。小さな作品だけど、いろんなことに気づかせてくれる良い映画だと思う。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY

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