『イースタン・プロミス』
【9月22日特記】 昨夜、WOWOW から録画しておいた映画『イースタン・プロミス』を観た。2008年のキネ旬ベストテンの6位に入っている映画。
デヴィッド・クローネンバーグ監督は『裸のランチ』で魅せられて、以来『エム・バタフライ』、『クラッシュ』と立て続けに見たが、ここのところ少し離れていた。
僕はあの『裸のランチ』のトリップ感に溢れるグロテスクさが好きだったのだが、この映画は幻想的なものを排した「現実」の世界である。
しかも、描かれているのがロンドンのロシア・マフィアの「現実」なので、これはかなり恐ろしい。
殺害した死体の正体を隠すために10本の指をパッチンパッチン切り落として行くとか、サウナで素っ裸の時に鋭利な刃物を持った2人組に斬りつけられるとか、考えただけで寒気がするようなシーン満載である。
ロンドンの病院に14歳の妊娠した少女が担ぎ込まれ、少女は死に女児が生まれる。担当看護師のアンナ(ナオミ・ワッツ)は少女のバッグに入っていた手帳を家に持って帰ってしまう。それはロシア語で書かれた日記で、ロシア・マフィアによって娼婦にされた少女の悲惨な事件が記されていた。
一方で、ロシア・マフィアの運転手として働くニコライという男(ヴィゴ・モーテンセン)が何かとアンナにつきまとうようになる。彼はロシア・マフィアのボスの歓心を買って正規メンバーに入れてもらおうとしていた。
──というような筋で、一見暗黒街の血の掟を描いたハードボイルド風の作品に見えるのだが、どんでん返しが用意してあって、単なるマフィア映画には終わっていない。
殺し合いの凄惨なシーンも印象に残るが、人種の対立を絡めて非常にバラエティに富んだ人物設定の確かさが際立った映画で、その多様な人物たちが織りなすストーリーも見事で、長く長く余韻が残る作品だった。
斬られたり刺されたりというのは僕も大の苦手なのだが、なんとか薄目を開けて見ていられそうな人であれば、是非見てほしい映画である。巧いなあ!と思った。
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