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Saturday, September 12, 2009

映画『BALLAD 名もなき恋のうた』

【9月12日特記】 映画『BALLAD 名もなき恋のうた』を観てきた。

山崎貴という人は僕にとってはあまり興味の湧かない人である。ただ、この作品は評判も良いようだし、クレヨンしんちゃんの実写映画化というのが気に入って、原作は観ていないものの、あのアニメをどう料理したのか確かめたくて見に行った。

だが、どうもこの監督は僕とは相性が良くないようだ。

まず、「CGの人」だという思いがあるので、「あ、あれは質感が少し違うからCGなんだろうな」「これもあれもCGだ」「これは見た目は分からないが多分CGなんだろうな」などと、普段だったら気にならないことがずっと気になる。

別に「CG=悪」だと思っている訳でもないのだが、どうも気になり始めると観ている間中ずっと散漫になってしまう。

他にも次々といろんなことが気になって来る。

例えば冒頭の廉姫(新垣結衣)が湖の畔で祈っているシーンで、カメラがガッキーに寄って行く時のその尋常ではない寄り方──それはCGではないし決して貶すようなカメラワークでもないのだが、「この寄り方は時代劇じゃないだろ」といきなり思ってしまった。

そして、台詞。──別に完璧な当時の日本語だけで台詞を構成しろなどとうるさいことを言うつもりはない。しかし、「自由」などという、明治維新以降に翻訳されたということが歴史的に明らかな言葉を、しかも一番大事なキモの台詞として使ってはいけない。ニュアンスの似た、できれば大和言葉を探すべきだったのではなかろうか?

あの時代には単に「自由」という言葉がなかったのではない。自由という概念がなかったのである。それだけに戦国時代の人物にこの言葉を口にさせるのはものすごい無理がある。

いや、それは現代からタイムスリップして行った真一(武井証)に教えられたのかもしれない。ならば、短いシーンで良いから真一が廉姫に教えるシーンを押さえておく必要があった。いや、たとえ真一が教えたのであってもちょっと納得が行かない。

又兵衛(草彅剛)が真一に「モテモテ」という言葉を教えられて、それを廉姫に使ってみるシーンはあったけれど、「モテモテ」と「自由」とでは理解する上での難易度が違い過ぎる。

何と言っても、「自由」というのは昔の日本には影も形もなかった概念なのだから。たった1日や2日でそれを理解したというのはちょっと現実離れしてはいないだろうか。

いや、「あまり時代背景には拘らずに作りました」と言うのであれば「あ、そうなんですか」で済んでしまう話だ。でも現実にはそうじゃなくて、パンフによると、城やら衣装やら戦法やらについては徹底的に時代考証に拘ったと言うのだから、そうなると脚本だけこんな具合なのはちょっとお笑い草だ、と僕は思ってしまう。

これが『クレヨンしんちゃん』なら全然気にならなかっただろうに、やっぱり実写でやるとなると実物の人間が出演していることが意図せざる引き鉄になって、物質的な面だけではなく精神的な面でも時代考証を求めてしまうのである。

真一が戦国武将に作用して旧来の戦における風習を変えさせてしまうというところがこの物語のミソなのだが、肝心のそこに説得力がないのである。

そもそもの設定がありえない話だし、なんだかチャンチャラおかしい話だということは脇に置いて、実際にタイムスリップした現代人と戦国時代の人間の心が通えばこういうことだって起こりうるだろうとは思うのだが、あまりに短いタイムスパンの中で実現してしまうところが嘘くさいのである。

そんなにめちゃくちゃに貶す気はなかったのだけれど、分析的に書こうとしたら長くなってしまった。

戦に勝って戻って来た又兵衛のところに駆け出す廉姫を前からカメラを引きながらワンショットで捉えるシーンとか、現代に戻った真一が「逃げてばかりはいられない」と勇気を持って学校まで自転車をこいで行くところを、最初は前からカメラを引きながら、そしてカメラを追いぬかせて背面から追うシーンとか、綺麗なシーンはふんだんにある。

言うまでもないがCGの技術も見事なものである。

結局のところ、クレヨンしんちゃんを実写の時代劇にしようという発想はとても良かったけれど、同じその発想にやっぱり超えられない無理があった、というのが僕の感じたことだ。

多分皆さんは僕ほどこういうことに拘らずに楽しく観られたのではないだろうか。良いお話だしね。ま、僕はどうもこの監督とは相性が良くないみたいである。

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Tracked on Tuesday, September 15, 2009 at 01:30

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