ドラマW『人間動物園』
【8月1日特記】 録画しておいたドラマW『人間動物園』を観た。
連城三紀彦の同名小説のTV化なのだが、ひとことで言って話が出来過ぎ。読者あるいは視聴者の裏をかき続けようとすると、こんな風な奇抜な話ができあがってしまう。もちろん、そういう作品を、作者と競いながら読んだり見たりするのがたまらなく好きな人もいるのだろうけれど・・・。
多分原作小説にはもっといろいろなことが書きこんであって、そのことによっていろんなことが緩和されているのだろうけれど、これを2時間のTVドラマにすると如何にも安っぽい印象になってしまう。心なしか、主演の松本幸四郎の演技まで安っぽく見えてしまう。
筋立てとしては非常に凝った仕掛けである。
誘拐事件なのだが、警察への通報は娘を誘拐された母親(小島聖)からではなく、その隣家の主婦(東ちずる)からであった。被害者の家には至る所に盗聴器が仕掛けてあり、犯人からそのことを知らされた母親は身動きが取れずに、隣家の主婦にメモを送って通報を頼んだのである。
駆けつけた刑事は3人(松本幸四郎、新井浩文、温水洋一)。電話をしてきた隣家の主婦は何日か前にペットの犬が誘拐されたと言って電話をしてきた御仁だけに、皆半信半疑である。
松本幸四郎扮する刑事は30年前に誘拐犯のアジトに単身乗りこんで誘拐犯の1人である身元不明の女性を射殺してしまった経験を持っている。それ以来、彼はその女性の墓を建ててやり、墓参りも欠かさず、そして、弾の入った拳銃は持たない。
そんな背景から、次々に新たな展開があって、そのたびに視聴者は今まで騙されていたことを知る。
「なんだ、そうだったのか」と思っていたら、まだそれが充分消化できないうちに次の「なんだ、そうだったのか」がやって来る。こういう展開を面白いと思う人にとっては面白いのだろう。しかし、僕にはちょっと「できすぎ」感が強すぎる。
30年前の誘拐事件からペットの誘拐の話まで、そして、「登場人物の誰それが実は」という話も見事に繋がっており、それが逆に言うと繋がり過ぎという感じがする。繰り返しになるけど、多分小説ではもう少し緩和されているのだろうと思うが、2時間ドラマにするとやたらと繋がったところばかりが目立ってしまうのである。
細かいところに遊びの要素も入れ込んだ脚本だったのだが、そういうところがあまり目立って来ない。筋が忙しすぎるんだろうね、きっと。
演出は『タナカヒロシのすべて』の田中誠。
『人間動物園』というタイトルも大仰。要するにそういう話が書きたかったんだね、という感じ。
これだけ二転三転を楽しませるお話なら、そんな重苦しい人間関係を背景に張りつけたりせず、もっと軽く、逆に現実感が損なわれるほどスマートに描くという手もあったのではないかなと思う。
ま、面白かったのは面白かったんだけどね。
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