ドラマW『都市伝説セピア』
【8月16日特記】 録画しておいたドラマW『都市伝説セピア』を観た。これじゃまるで『世にも奇妙な物語』だなあと思ったら、堂々と「WOWOW版『世にも奇妙な物語』」と謳っていたのでびっくりした。
- フクロウ男
- アイスマン
- 死者恋
の3作からなっており、直木賞作家・朱川湊人とジャパニーズ・ホラーの第一人者・落合正幸という夢の組合せであると宣伝文句にはあるが、1)と3)は確かに落合正行監督・脚本だが、2)は脚本が村井さだゆき、監督は円谷プロ出身の八木毅だった。
そして、通しのタイトルにやや偽りあり、で、実際都市伝説っぽい話は1)だけである。
1)は退屈しのぎに自分で都市伝説をでっちあげてネットに投稿し、やがて自らも「フクロウ男」の格好で街に出没するようになるなど、どんどん深みに嵌って行く男の話で、成宮寛貴が演じている。
2)は中学時代に親戚の田舎で見た氷づけの河童の話。昔の「見世物小屋」が出てくるなど我々の世代にはノスタルジーだか、都市伝説とはかけ離れた話だ。主人公のカズキを、少年時代は入江甚儀が、中年になった現代は佐野史郎が演じている。
3)は死者の絵を描き続けている画家・鼎凛子(余貴美子)に興味を持ったフリーのジャーナリスト・久美子(原沙知絵)が彼女を自宅に訪ね、そこで聞く凛子の少女時代からの話。──20歳で自殺した画学生にともに憧れる凛子としのぶ(いしのようこ)。やがてしのぶの行動が常軌を逸して来る。
その3作の中で群を抜いて出来が良かったのは3)である。
1)も2)もどういう「落ち」がつくのかという一発勝負的な企画なのだが、そこに至るまでに少し飽きさせるところがある。
1)はまだ展開に途中いくつかアクセントがあって楽しめるが、2)はあまり変化のない緩い登り坂のような感じで少し辛い。むしろ少年に河童を見せた少女役の女の子の可愛さに引っ張られる。
それに対して3)はどういう「落ち」がつくのか見始めて間もない時点から凡そ読めてしまう。しかし、そこに至るまでのところで巧みにストーリーをうねらせて、見る者をぐいぐいと引っ張って行ってくれる。
外側は異色の画家・凛子をジャーナリスト・久美子がインタビューするという構成だが、凛子が語る自殺した画学生をめぐる自分としのぶの話が入れ子になっており、凛子の語りを聴きながらまるで久美子がそれを追体験しているような印象にしているところが怖い。
ここらあたりがさすがに落合正幸の本領発揮というところなのだろう。
そして、その内側の世界で見せる2人の女の狂気じみた偏愛合戦、やがてそれが外側の久美子のところまで浸み出してきて、という構成が、余といしのの演技も卓越して見ごたえがあるが、何と言っても脚本の巧みさが際立っている。
この話だけ独立させてドラマWにするという手もあったのではないだろうか。
結局のところ、2)が一番平板だな、と思ったのだが、2)だけが八木毅の演出と知って、これが実力差と言うものなのかな、と思ってしまった。
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