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Tuesday, August 25, 2009

『僕らのワンダフルデイズ』完成披露試写会

【8月25日特記】 『僕らのワンダフルデイズ』完成披露試写会に行ってきました(於:梅田ピカデリー2)。

いつもと違って今回はちょっとネタバレを書きます。いえ、最後の最後まで書いてしまうようなことはしません。ただし、宣材の中では一切明かされていないことに触れます。

それは、僕としては、ここまでの情報を持った上でこの映画を見ても何等問題がないと考えているからです。しかし、感じ方は人それぞれです。観る前にそんなことを知ってしまっては台無しだと感じる人もいるでしょう。

もしも「自分が観る前には余計な情報は一切受け付けたくない」「読んでから映画を見て後悔するのは絶対いやだ」と思われる方は、この文章を読むのはここら辺りでストップしてください。Continue reading.... のリンクはクリックしないでください。

ただ、ここでお別れになってしまう読者の方にひと言だけお伝えするとすれば、それは却々良い映画でしたよ、ということです。さて、ここから先はネタバレです。

主人公は53歳の食品会社・次長、藤岡徹(竹中直人)。彼は胆石で入院中の病院で医師たちの会議を立ち聞きしてしまい、実は自分が末期癌で余命幾許もないことを知ってしまいます。妻の章子(浅田美代子)はあくまで告知しないつもりのようです。

徹は絶望の淵に落ち込み、悲嘆に暮れますが、やがて息子の高校の学園祭でバンド演奏を見たのをきっかけに、自分が高校時代に組んでいたバンド「シーラカンズ」を再結成して、死んでしまう前にもう一度あの頃のように輝いてみたいと思い立ちます。

それで、かつてのメンバーであるベースの栗田(段田安則)、キーボードの渡辺(斉藤暁)、ギターの山本(宅麻伸)に、自分が癌であることを告げて、もう一度一緒にやってほしいと頼みます。

しかし、この映画はただのそんな「お涙頂戴」の「難病もの」ではありません。実は癌で余命幾許もないというのは他の入院患者の話で、そそっかしい徹の勘違いだったのです。

このことは映画の宣材の中では一切明かされてしません。しかし、徹の勘違いであることを示すヒントが脚本の中に多すぎます。僕は映画が始まって10分かそこらのうちに見破ってしまい、「なんだ、この杜撰な脚本は!」と暫し憤慨したのですが、なんのなんの、これは脚本家の狙い通りだったのです。

ヒントを小出しに小出しにして、観客が少しずつそのことに気づいてくるのを、脚本家は待っていたのです。そして、余程勘の悪い人でも、徹が帰ってきたら電話口で妻の章子が泣いているのを見てショックを受けるシーン辺りで、「ありゃ、これは勘違いか?」と気づくのです。

竹中直人の本当にいつもの竹中直人らしいオーバーアクションの演技にも、ことが生死に関することだけに観客は最初は却々笑えません。それが見ているうちに、どうやらこれは徹の独り相撲だと気づいて、それに気づくとおかしくなって、館内の笑い声も映画の進行に伴って次第に大きくなって行きます。

そして、終盤に差し掛かる辺りで徹の勘違いだったことが観客に対して明かされるのですが、それで終わりにしない仕掛けがちゃんとその後のストーリーに仕込んであります。いやあ、本当に良く書けた脚本でした。

高校時代のメンバーのうちドラムスだけは現在海外在住なので仕方なく新メンバーを探すのですが、そこへやってきたのが謎の資産家・日暮(稲垣潤一)です。この役をあまり演技経験のない稲垣がやったことが正に嵌り役で、この飄々とした感じが何とも言えず良いです。

主演の竹中直人もそうですが、この作品は役者たちの個人技にかなり支えられた映画です。徹の娘の役で貫地谷しほりが出ているのですが、僕は彼女の巧さを改めて実感しました。若手女優の中では抜群と言って良い自然な演技力にただ舌を巻きました。

それから、紺野美沙子。この人は若い頃には本当に清純な美人という感じだったのがさすがに少し老けたなあ、という印象がある一方で、若い頃にはこんなに巧かったっけ?と訝るほどの名演でした。

優れた脚本があって、見事な演技陣がいて、そして、もうひとつ特筆すべきは音楽です。いやあ、音楽ものはやっぱり胸が高鳴ります。学生時代に楽器をやっていた人なら特にそうなのではないでしょうか。

劇中歌を書いたのは奥田民生です。自ら歌っているエンディング・テーマは別として、他の2曲ではあのあくの強い粘りの利いた奥田節を抑え目にして、加山雄三ファンであるという竹中のためにものすごく素直な歌を書いています。これがまた良いんだな!

そして、劇中の親父バンド・コンテストに出てくるバンドと言うバンドが、どれもこれもホントに「らしい」んですよね(どうやら本物のコンテスト参加者のようですが)。この辺でも胸が熱くなってくるのです。

いやあ、地味だけど馬鹿にならない良い映画でした。

ただひとつ、カメラの切り取り方がなんかテレビ的と言うか、なんか面白くないんですね。いつも画面の中心部に人物の顔が収まっていて、もうちょっと凝って撮ろうと思わんかったのかいな、と少し不思議にさえ思ったのですが、まあこれも人間を撮ろうとした結果なのかもしれません。

驚異的なヒットにはならないでしょう。でも、観る価値のある映画だと思いますよ。

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