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Sunday, August 02, 2009

映画『サマーウォーズ』

【8月2日特記】 映画『サマーウォーズ』を観てきた。細田守監督のアニメーション。観なかったのだけれど前作『時をかける少女』がとても評判が良かったので、今作は是非見てみようと思った。とても良かった。

こういう作品を観るといろんなことに思い至ってしまう。たとえば「琴線に触れる」ってどういうことなんだろうか、とか、「絵心がある」ってどういうことなんだろうか、とか・・・。

いや、その辺りのことに触れる前に、まず映画の登場人物とあらすじに触れておこう。

主人公は健二。高2。もう少しで数学オリンピックの日本代表に選ばれるくらいの数学の天才だが、それ以外にはさしたる取り柄もなく、どちらかと言うとあまりぱっとしない物理部員。バイトで電脳仮想空間OZのメンテをしている。

その健二に憧れの先輩・夏希がバイトをしないかと誘う。曽祖母の栄が住む長野県の上田市に一緒に行ってくれるだけで良いと言うのでほいほい引き受けてしまうが、到着してみると実は夏希が見栄張って嘘をついたために「東大生で留学経験のある良家の男子」の彼氏役を演じなければならないと判る。

当然健二は尻込みするが、人を観る眼が厳しい栄には何故か気に入られ、栄の誕生日に集まったものすごい大勢の親戚たちにも祝福されて後には引けなくなってしまう。

そして、翌朝、全世界中に圧倒的な登録者数を誇るOZに何者かがハッキングを仕掛け、他人のアバターを次から次に乗っ取っては現実世界のさまざまな公共システムに侵入し、全世界をパニックに陥れる。

──ここまで書くと、ははあ、なるほど、それでそのあまりぱっとしない高校生・健二が数学の才能を活かして犯人と対決して世界を救うんだな、と想像するだろうが、その想像はかなり当たっているとは言え根本的に違う部分がある。

それは健二がひとりで世界を救うのではなく、陣内一族の親戚一同が力を合わせて、いや最後の最後には世界中が力を合わせて世界を救うのである。この辺の設定がすごく面白い。

協力するったって、ただの親戚のおっさんたちやガキどもである。その協力の仕方が非常に面白い。それぞれの仕事や経歴や趣味がなかなか巧みに設定してあるのが分かる。

そして親戚ったって、血の繋がりだけで鉄の一枚岩になれるはずもなく、もちろんはねっ返りも外れ者もいれば、やっかみも反目もある。

そういうことを2Dアニメでちゃんと描きながら、電脳空間での闘いをこっちは3D(CG)で圧倒的な創造性と迫力で描いてくる。このバランスがまた良い。

電脳空間の画は観ている者の脳内に直接刺激を与えてくるような感じさえする。そして、上田市の大豪邸での大家族の日常生活には記憶を呼び覚ます何かがある。そして、ほろっとさせる何かがある。

絵心って何だろう?と思うのである。

台本に全ての設定を書く訳には行かない。山の向こうには何が見えているのか、縁側の奥には何があるのか、その時夏希はどういう仕種をするのか、大勢が座っている食卓はどの角度から描かれるのか、そういうことを決めるのが絵心だろう。

そして、蚊帳の網目とか、巻き上げたすだれとか、いや、もっと無機質なもの、たとえば瓦屋根の上に載っているパラボラアンテナとか、そんな描かれたもののひとつひとつが観ている者の心の襞の中に入り込んでくるのである。

手の上に重ねられた手、そして互いの指が動いて組み合わされる。──いや、そんな恋愛っぽいシーンだけではなく、たとえば佳主馬のアバターの背中をみんなのアバターが「行って来い」と押す辺りとか、そういうところにもほろっと来てしまうのである。

琴線に触れる表現とそうでない表現の差はどこで決まるのだろうと考えてみるが、明確な答えは得られない。

こういう筋を考える人ってすごいなあと思う。そして、こんなにまとまった脚本を書いた奥寺佐渡子(『お引越し』、『時をかける少女』、『しゃべれどもしゃべれども』など)もすごいと思うし、こんな絵に仕上げた作画チームもすごいと思う。

主人公2人の声優に神木隆之介、桜庭みなみを宛てたのは宣伝/集客効果も考えてのことだろうが、90歳の曽祖母に富司純子、38歳の伯母に『純喫茶磯辺』の仲里依紗、そしてまたいとこの男子中学生・佳主馬に谷村美月を起用している辺りが面白い。

このアニメなかなかすごかった。この監督の次回作も楽しみ。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

カノンな日々
犬儒派的牧歌
ラムの大通り
Swing des Spoutniks
アロハ坊主の日がな一日

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