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Saturday, August 08, 2009

映画『色即ぜねれいしょん』

【8月8日特記】 映画『色即ぜねれいしょん』を観てきた。 監督ではなく、今回は珍しく脚本家に惹かれて──。

向井康介:山下敦弘監督のファンにはお馴染みの脚本家である。僕がこれまでに観たのは『リアリズムの宿』、『くりいむレモン』、『青い車』、『リンダ リンダ リンダ』、『松ヶ根乱射事件』、『神童』の6本(TVで観たものも含む)。今回も「間の悪さ」を見事に表現している。

この映画を僕が褒めすぎるとしたら、それは世代的なものであり、地域的な共感のせいである。

原作のみうらじゅん、監督の田口トモロヲは僕と完全に同じ世代に属している。僕は、今でこそ割合好きだが、少年時代にはディランは聴かなかった。だが、ロックであれ、フォークであれ、誰かしらに何かしらの音楽があった。そして、それに熱中していた。

主たる音源はラジオの深夜放送だった。僕らはそこにリクエスト葉書を出した。そして、それが読まれた日にゃ、この映画にあったように狂喜乱舞したものである。

みうらじゅんがそうであるように、そして原作の舞台がそうであるように、僕らは関西で育った。京都・神戸・大阪など地域によって若干の差異はあるにせよ、みんな等しく関西弁を喋り関西弁を聞いて育った。

だから、始まってすぐのシーンで堀ちえみ扮するオカンの関西弁を聞いてまず「ええなあ」と思う。臼田あさ美が扮する女子大生オリーブの、鼻にかかった関西弁であんな風に甘えられると、あの年齢の頃ならもう冗談抜きで「昇天」してたと思う。

スウェーデンがフリーセックスやなんて、そんなアホなぁ、と今の子たちは思うかもしれないが、僕らはみんなそれを信じて、そして真剣に憧れていた。

みうらじゅんがインタビューで語っているように、「セックスなんて一生できないんじゃないかな」と本当に心配してた。

そういう時代のそういう映画なのである。

ここまで読んで「そうそう!」と膝を打った人がいたら、それはこの映画はあんたのための映画やっちゅうこと。

そして、そういうお話をそういう時代設定/地域設定で推し進めて行く上で、キャストがまた何とも言えず絶妙なのである。

オーディションで選ばれた主役(つまりは、苗字こそ「乾」に変えてあるが1974年のみうらじゅん役)の渡辺大知が不思議に良い。元々は「黒猫チェルシー」というバンドのボーカリストらしく、演技初体験なのでややオーバーアクション気味なのだが、それが却って如何にも青春っぽいビクビク感を体現できている。

そして、乾の親友の1人になっていたのが森田直幸で、こいつ誰やったかなあ、と思っていたのだが途中で思い出した。『大阪ハムレット』でヤンキーな次男を演ってた奴だ。こいつも抜群に良い。渡辺と違って演技が自然そのもの。他の同級生役では古川雄弥が良い。

そしてヒゲゴジラ役の峯田和伸(銀杏BOYZ)とヒッピー家庭教師役の岸田繁(くるり)がこれまた奇跡的な嵌り役と言える。堀ちえみもまた見事な嵌り役。

んで、何と言っても、マドンナであるオリーブ役の臼田あさ美が、こりゃもう絶品である。『やったぜベイビー!』の宮崎萬純、『グミ・チョコレート・パイン』の黒川芽以と並ぶと言って良いのではないだろうか。

カメラは柴主高秀。

エンディング・テーマが伝説のギタリスト山口富士夫率いる「村八分」だったのにもぶっ飛んだ。

みうらじゅん世代の関西人ならど真ん中だと思うが、テーマ的にはかなり普遍的な青春ものであるからして、もう少し上下の世代、他地区の出身者にもちゃんと受け入れられるのではないかと思う。

佳作!(そう、「佳作」という少し謙虚な褒め方がぴったりの映画である)

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

ラムの大通り

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Comments

こんばんは。

はい。
博多出身、少し上の世代(『パッチギ!』あたり)にもバッチリでした。

>『グミ・チョコレート・パイン』の黒川芽以と並ぶ

ほんとうにそうです。
ぼくも昇天すれすれ。
よくぞ、あそこでホテルに行かずに…。

いやあ、感慨深すぎる映画でした。

Posted by: えい | Wednesday, August 12, 2009 23:39

> えいさん
わざわざこっちまで来ていただいて書き込んでもらってすみません。
はい、かつて『グミ・チョコレート・パイン』を褒めておられたのを憶えていて、えいさんなら解ってくれると思ってました。ブログを拝見したらやっぱり臼田あさ美ベタ褒めで嬉しかったです。

Posted by: yama_eigh | Thursday, August 13, 2009 09:44

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