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Saturday, August 15, 2009

映画『湖のほとりで』

【8月15日特記】 映画『湖のほとりで』を観てきた。イタリアのアカデミー賞と言われるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で史上最多の主要10部門を独占した映画。昨日の朝日の夕刊に載ったこともあり毎回立ち見の出る盛況ぶり。年配客多し。

しかし、それにしても不思議だったのは、窓口で「この回は満員で立ち見になります。次回はまだ空いておりますが」と言われると、見た目団塊の世代以上の人たちは例外なく「この回で」と答えていたこと。5~6人そういう人を見た。我々夫婦は迷うことなく座って見られる次回を選んだのだが、彼らの世代では映画を立ち見するなんて当たり前のことなんだろうか?

閑話休題。

で、「そんなに賞を独占するほどの映画かい?」っちゅう気もせんではないが、まあまあ面白い、良くできた映画だった。

殺人事件を追うミステリなのだが、そこに「家族」というテーマが織り込んであり、それが織り込んであるから深みが出ているとも言える一方で、テーマがあまりにくっきりと見え過ぎてちょっと味がくどくなっているところもある。

冒頭、少女が歩いている。そこに後ろから車が来て、クラクションを鳴らして止まる。少女とは顔見知りのようで何か話しかけているが、それに答える少女だけが見えて運転者の姿は見えない。

少女は「ママが心配するからダメ」と抵抗するが、やがて車に乗り込む。この一部始終をやや下からのアングルのロングで押さえていて結構怖い画になっている。

観客は間違いなく少女誘拐事件だと思う。やがて連れ去った男の姿も見えるが、どうも知的障害者のようだ。そして、それを窓から監視している老人がいる。これも怖い。

ところがあっさり少女は解放され、刑事に対して「湖には蛇がいて、それに睨まれると眠ってしまう(これはこの地方の有名な伝説)。今日、本当にそれを見た」と言う。不審に思って湖畔に行ってみた刑事が女性の全裸死体を発見し、それが本筋の物語の発端になる。

──こういう風に観客の予想を裏切りながら物語を始めるところが非常に巧い!

そういう展開の仕方はこの映画を通じてずっと維持される。登場人物がそれぞれの人間関係にさまざまな問題点を抱えていたことが順番に発覚して、最後は意外な犯人にたどり着く。

その途中で、事件を追う刑事自身の、妻が若年性認知症で施設に入っていることとか、そのことも原因で娘とあまりしっくりと行っていないとかいう問題点も描かれていて、このことがこの映画をぐっと深いものにしている。

ただし、最後のところでなんでまた犯人がこんなに簡単に自白してしまうのか、という不思議さが残るのも確か。妻が言うには「ストーリーに精巧さがない」。

ただ、主演の刑事役のトニ・セルヴィッロは却々印象に残る名演であったと思う。

イタリアなどと言うと、如何にも「太陽燦々の地中海」とか「魁偉な古代遺跡」とか言った印象があるが、むしろ思い出すのは『ツインピークス』だった(もちろんあんなに寒々とした景色ではないが・・・)。

観光ガイドとは全く違うイタリアの村の風景と生活を映し出してくれていたのが、なんだかこの話にぴったりの気がした。ちなみに原作の小説の舞台はノルウェーだったそうだ。

多分、見終わった瞬間は僕と同じように「なんでそんなあっさり白状しちゃうの?」とか、「『ニュー・シネマ・パラダイス』『ライフ・イズ・ビューティフル』に続く云々と言うほどの映画か?」とか感じる人も多いのではないかと思うのだが、果たして余韻は存外に長く残る。

そういう映画は大体良い映画である。

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