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Sunday, July 05, 2009

映画『MW ─ムウ─』

【7月5日特記】 映画『MW ─ムウ─』を観てきた。どんな話なのか知らなかったのだけれど、手塚治虫原作というところに魅かれた。やはり手塚ファンが多かったのか年配の客が目立つ。いや、それよりもスカスカの入りであることのほうが目立つか(笑)

ただ、原作は良いとしても、なんか聞いたこともない監督だし、ひどく未整理な部分が多い作品になっていたりしまいか、と心配しながら見に行ったのだが、なんのなんの、前半はかなりの良い出来だ。

冒頭はタイでのロケだ。しかも誘拐事件の身代金受け渡しの場面。犯人の結城美智雄(玉木宏)がタイ警察と日本から応援に来た沢木刑事(石橋凌)と橘刑事(林泰文)を次々に欺いて行く。

まんまと身代金を奪われた後、「あいつが犯人では?」と気づいた沢木が結城を追う。モノレールに乗った沢木を追ったが乗り逃がし、今度はタクシーを強奪して追いかける。

このカーチェイスが、日本映画ではちょっとありえないくらいよくできている。そして、車を棄てて走る沢木。ARB のボーカリストだった頃の面影もなくぶざまに中年太りしてしまった石橋凌が大汗かいて走る、走る! スマートで汗ひとつかいてなさそうな玉木との対照も良し。

道が狭くてゴミゴミしてて、やたらと人が溢れているバンコクという土地をうまく活用して表現した画作りだった。

その結城には相棒がいる。結城と共に16年前の沖之真船島事件の生き残りである賀来裕太郎(山田孝之)である。島民のほとんどが原因不明の死を遂げたにも拘わらず、政府の圧力で真実は闇に葬られたままである。

結城はその「復讐」に走っている。神父になった賀来は結城と結託することに罪の意識を持っているが、16年前の命の恩人である結城に逆らえない。この玉木の悪役ぶりが凄く良い。こういうのができる、いや、こういうのが似合う役者だったんだなあ、と初めて気づいた。

こういう話ではどうしても現実離れしたところや辻褄が合わない部分が出てきたりするものだが、それを防ぐ一番良い手立ては「早い展開」だと思うのだが、この映画ではまさにそれができていて、途中まであまり引っ掛かりを覚えたりせず楽しく画面を追い続けることができた。

ただ、後半は逆に、展開を急いだためか、脚本に深みがなくなって来て、正直言って「なんでこんなに面白くないんだろ?」と訝るくらいになってしまった。

結城が何を意図しているのか見えなくなってくるし、米軍はあまりに不甲斐ないし、山田孝之の役者としての見せ場が可哀そうなくらいないし、画はとてもきれいなだけにちょっと残念、とがっくり来たところで最後に少しどんでん返しがあって、まあまあの出来になったかな、って感じ。

結城がどんどん壊れてきてますます狂気に走るところはもう少し時間をかけて描かないと無理ではないかな? それから、原作にあったらしい結城と賀来の同性愛関係は明示的に描いたほうが良かったかもしれない。

あと、余談だが、山田孝之が一番好きなシーンとして沖之真船島で米軍ヘリに銃撃されたときに賀来が新聞記者の牧野(石田ゆり子)を放ったらかして走って逃げるところを挙げていたけれど、僕もここは人間らしくていいなあと妙に気に入ってしまったシーンだった。

監督は岩本仁志、撮影が米国在住の石坂拓郎。脚本が大石哲也と木村春夫。VFXは白組。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

アロハ坊主の日がな一日

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Comments

そこのシーンは、逃げたんじゃなくて
結城をヘリコプターから逃がす、助けるため
賀来自身がヘリコプターの的になろうと必死に走った
だから、石田さんを助けたり気にしたりする余裕がなかった
そういう気持ちであのシーンは演じていたと

昨日の舞台挨拶で山田さんが、そのシーンの裏エピソードを話してました。

Posted by: ムウ | Monday, July 06, 2009 at 11:53

> ムウさん
なるほど、そんなこと言ってましたか。それまた、しかし、深い深い心理ですね。何を考える余裕もなく逃げるのが人間ってもんだ、と僕は随分納得してただけに肩透かし食らったような気分です(笑)

Posted by: yama_eigh | Friday, July 10, 2009 at 20:04

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