『ダイブ!!』
【6月20日特記】 今日は溜まっていた録画の棚卸し。
『虹の女神』以来気になっていながらずっと観ていなかった熊澤尚人監督。こないだ初めて『おと・な・り』を観たら随分良かったので、たまたま WOWOW でかかった『ダイブ!!』も録画しておいた。
まあ、カメラがよく動くのである。飛び込み台の周りだけではない。通常の生活のシーンでも回る、滑る、寄る。
だが、やはり際立って美しい動きなのは飛び込み台周り。水泳映画のカメラワークと言えば思い出すのは『ラフ』である。あの映画では飛び込み台を中心としてのパンナップとパンダウン、そしてコースロープに沿った速い動きが特徴的だったが、この『ダイブ!!』ではクレーンが大きく回り込む。
今ではCGでかなりのインチキができるとは言え、飛び込みシーンは奇跡的に綺麗に取れている。体の動き、水の飛沫。飛び込み台とプールの大きさ。
3人の飛び込み選手に扮した役者も良い。
主人公は林遣都──『バッテリー』にピッチャー役で主演してた少年だ。
そして、池松壮亮──彼が映画のキャリアは一番豊富だろう(僕が観たのは『鉄人28号』の金田正太郎だけだけれどw)。
3人目は「これ、誰だっけ?」と考えながら見ていたのだが、溝端淳平──おお、そうか。『世界ウルルン滞在記ルネサンス』とは随分と印象が違う。なんと言うか凛々しい。
3人揃って引きしまった肉体と躍動感を見せてくれた。
ただ、こういうスポーツものって突拍子もない展開をするわけには行かないので、どんなに練れた良い脚本であっても、やっぱりちょっと限界はある。読めてしまうのである。
だから、映画の構成としてはものすごく評価できるのだけれど、残念ながらストーリーを追っている観客に感動を与えるというところまでは辿りつかないのである。
それでも、考えられる全ての対抗軸のパタンを動員して精一杯彩り豊かな話にしようとしていたのはよく解る。
天才選手と努力型の選手。全体的な能力と特殊な能力(「ダイヤモンドの目」)。都会の選手と田舎から出てきた選手。サラブレッドのアスリートと普通の家の子供。父子鷹──父親としての役割とコーチとしての役割、父子の愛と確執。ミスのない固い演技か粗削りでも高度な技への挑戦か、あるいは本人にとって思い入れや因縁のある技か。怪我や故障との戦いだったり、急な発熱、あるいは極度の緊張からの痙攣、等々。
よく頑張った、っつう感じの映画。原作は森絵都、脚本はなんと戸田山雅司(と林民夫)だった。
そして、とても美しい映画。人間の動きもそうだが、水面の揺らぎとかも。あるいは、夕焼けをバックにした巨大な飛び込み台とか。こういう題材を選んじゃったことがちょっと残念に思えるほどだった。多分それが監督の力量を表しているのだと思う。
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