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Sunday, June 14, 2009

映画『ガマの油』

【6月14日特記】 映画『ガマの油』を観てきた。役所広司初監督作品。

その役所広司が何かのインタビューに答えて、

自分は長い間映画には出てきたので映画作りについて大体は解っているつもりだった。ところが、俳優は撮影が終わればそれで終わりだが、その後に編集などという大切な作業があるなんて知らなかった。

みたいなことを言っていて(何でのインタビューだったのか憶えていないので、正確な引用ではないが)、「何を脳天気な、大丈夫かいな」と思ったのだが、見てみたらびっくりするほど良い映画だった。

少しく解りにくい映画ではある。

デイ・トレーダの矢沢(役所)はプールが2つある豪邸に住み、たくさん並んだPCのモニタと睨めっこしながら、あるいは株価が上下するとアラートが鳴る携帯電話をポケットに入れて銀玉鉄砲を撃ちながら暮らしている。

矢沢には妻(小林聡美)がおり、息子・拓也(瑛太)がおり、拓也の幼馴染で今度少年院から出てくるサブロー(格闘家の澤屋敷純一)を引き取ることにもなっている。

ところがサブローを少年院に迎えに行く途中で拓也は車と激突し、自分で「大丈夫です」と起き上って歩き出したものの、少年院の門を入ったところで倒れて昏睡状態となる。

拓也の恋人・光(二階堂ふみ)はそんなことも知らずに、いつものように拓也の携帯に頻繁にメールを送り、電話をしてくる。ある日矢沢がその電話に出るが、光はそれが拓也の父とは気づかず、拓也と話しているつもりになっている。仕方なく矢沢も息子の振りをして、その後も光との電話でのやり取りを続ける。

とても不思議な設定、不思議な筋である。そして、役所の演技がいつもよりオーバーな気がする。俳優・役所はひょっとして一度はこういうオーバーアクションをやってみたくて、それを監督・役所から俳優・役所に要求させたのかなあ、などといろいろ考える。

しかし、それにしても父親と息子の声を間違うか?という気もしないではない。もちろん血が繋がっていると似ていたりはするものだが、年齢差があるだろう? と最初のうちはちょっと引っ掛かるのだが、観るうちにそういうことが次第にどうでもよくなってくる。

カメラワークも素晴らしいのだが、それよりも気になったのは、この不思議で味わい深い本を書いたのは一体誰なのだろう?ということだった。

見終わってすぐにパンフでチェックすると、脚本を書いたのは「うらら」だった。

うららは今村昌平の映画学校の1期生で、今村や北野武の映画でスクリプタ(記録)を務めてきた女性らしい。この映画では3役を兼ねており、原案(役所広司と共同):中田琇子、脚本:うらら、記録:福田花子と名前を使い分けている。

わざとなのかどうなのか、各シーンの繋がり方が少し不親切で解りにくいところもあるのだが、矢沢という中年男の死生観や心象風景が非常に深く、鮮烈に塗り込められた脚本である。

そして撮影監督は、主に米国で活躍し、最近では三池崇史監督の『SUKIYAKI WESTERN ジャンゴ』を手掛けた栗田豊通であった。

都会も田舎も今も昔も、どれをとっても極めて日本的で印象に残る画。ベッドの真上から撮ったり、階段を上るところを引いて撮ったり、誰を撮ってもこれまた印象に残る。ただ、やたらと DVE で切って左右2画面合成にするのだけが、ちょっと目障りな感じがしたけど。

そして、役者の素晴らしさ。

小林聡美が矢沢の妻と、矢沢の回想の中に出てくるガマの油売り(益岡徹)の妻の2役で出ているのだが、何の説明もないので最初は同一人物か、血の繋がりでもあるのかと思ってしまったが、要はこれは矢沢にとっての「いい女」の代表なのだ。

と思いながらパンフを繰っているとやっぱりそうみたいで、役所自身が「『転校生』のときからファンなんです」と語っていた。映画を観ていても役所がいかに小林のことを大事に思っているかがよく解る。

それから、光のおばあちゃん役の八千草薫。何を今さらではあるが、やっぱり名優である。そして、今回の目玉は光役で映画初出演の二階堂ふみ。この子が本当に躍動感に溢れて魅力的で、個性も豊かで素晴らしい。

全体として説明的でない手法が良かった。心にジーンと響く作品だった。

慣れない新人監督を支えて熟練のスタッフが勝手に手際よくやってしまった部分も当然あるのだろうけれど、監督デビュー作にしてこれだけ質が高く印象深い作品ができあがったことに拍手を送りたい。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

カノンな日々

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