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Saturday, May 30, 2009

映画『ラスト・ブラッド』(1)

【5月30日特記】 映画『ラスト・ブラッド』を観てきた。

セーラー服の女子高生が日本刀で吸血鬼を斬って斬って斬り倒す、と言っても痛快時代劇などと言う範疇では全然ない。血は相当に流れる。

この映画の原作となったオリジナル・アニメで、2000年に公開され後にDVDとして発売された『BLOOD THE LAST VAMPIRE』も、それを下敷きにしてTVアニメ化され2005年の10月から1年間に亘ってTBS 系列で放送された『BLOOD+』(全50話)も、縁あって僕は全て観ている。

だから、この映画を見逃すわけには行かなかったのである。

『BLOOD THE LAST VAMPIRE』のほうは、これを観て感動したクエンティン・タランティーノが国分寺にあるプロダクションI.Gの玄関にいきなり現れたという(嘘だか本当だか知らんが)伝説があるくらいの衝撃的な作品である。

また、同じプロダクションI.Gが手掛けたTVアニメのほうも、わずか48分の原作をもとに時代背景を変えながら50話の大作に引き伸ばしたためか、中盤からあまりに展開が遅すぎるという恨みはあったものの、静謐と恐慌をかき混ぜたような世界観はそのままで、時に息を呑むような構図があるなど、出色の出来であったと思う。

この映画の出だしは、あの『BLOOD THE LAST VAMPIRE』と同じ、地下鉄の中での小夜(さや)による「鬼退治」である。それもそのはずで、この映画、邦題こそ『ラスト・ブラッド』であるが英語の原題は原作と同じ『BLOOD THE LAST VAMPIRE』なのである。

このシーンはまさに原作そのままの鬼気迫る再現となっている。そして、小夜がセーラー服を宛がわれてアメリカン・スクールに入学するあたりまでが原作と同じ。そこからが映画オリジナルの展開となる。戦国時代に遡って、原作で甦る前の小夜を描いたりもしている。

原作とTVアニメでは「翼手」と呼ばれていた存在がここでは端的に「鬼」と呼ばれ、その鬼どもの親玉としてオニゲンなる存在が措定されている。オニゲンに扮しているのは小雪である。

で、小夜に扮しているチョン・ジヒョンがなかなか良い。『猟奇的な彼女』の彼女である。

僕は韓国映画は見たことがないのでよく解らないが、多分従来の彼女のファンも原作のアニメのファンもともに満足するのではないかと思う。

ただ、これは予告編を観た時から思っていたのだが、この作品でワイヤー・アクションというのはちょっと違うような気がする。

ワイヤー・アクションはやっぱり超能力とか忍術とか妖術とか、そういうものを描くときに使うべき手段ではないだろうか。小夜はそういう何か特別な「力」や「術」で翔ぶのではなく、超人的なジャンプ力であるとは言え、あくまで自分の足で跳ぶのである。

だから、それは放物線を描いているはずだと思う。ワイヤー・アクションにするとどうしても直線に近い移動になってしまうので、そこに違和感を覚えた。

それから、もうひとつ。セーラー服のスカートの下に黒いアンダースコート状のものを穿いていたようだけど、あれはないだろう。スカートの中はあくまできわどく映さないか、どうしても映すのであれば白いパンティしかあるまい。その辺がどうも日本人の心を解っていないなあ(笑)、とがっかりした。

ただ、1箇所だけ、なんか白いもんが見えたような気がするんだけど、目の錯覚かな? 錯覚でないとしたら、それもおかしい(いつ、何のために穿き換えたんだよ?)

ま、それは良いとして、戦国時代の小夜の師匠であるカトウというこの映画のオリジナル・キャラがいるのだが、これがまたなかなか味がある。この老人に扮しているのは誰なんだろうと思っていたら、途中で突如気がついた。──これは倉田保昭なのである。

うーむ、これこそまさに「昔取った杵柄」的な名演! いやあ、感動したなあ。

さて、全般としては原作を正しく継承した作品になっている。よくできましたと言って良いのではないかな。

ただ、あの終わり方は日本人の感性ではないね。なんかアメリカ的。この映画は香港とフランスの合作なのだが、僕は香港映画はほとんど見ていないのでよく解らないが、香港の感覚ではないような気がする。ヨーロッパ的でもない。なんかアメリカ的。

それからやっぱり随所にある、やや間違ったエキゾチック・ジャパン。小雪のオニゲンが小夜の前に登場したシーンでは、いきなり唐傘をバサッと開くんですよ。キタ---(゜∀゜)---!!!!っつうか、そんなことするかっつうか・・・。で、当然小夜はそれを一太刀で斬り裂くわけです。──ま、こういうシーンは楽しめば良いんですけどね(笑)

前述の通り、ストーリーを構築し直した上で全く原作のイメージを損なわない映像を撮ったところは評価して良いと思う。

ただ、結局見終わって思うのは、山ほど設定を重ねた上で実際に作品化する上ではそれをどんどん削って行ったという原作の手法が如何に功を奏しているかということだった。さまざまな設定を付け加えた映画を観て、結局原作の凄さが際立ってしまった。そして、それこそが日本人の感性にマッチしているのだと思う。

もし、大元の原作を観ていない人がいたら、今は Blu-ray で発売されているので是非見てほしいと思う。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

アロハ坊主の日がな一日

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