ドラマW『Go Ape』
【5月2日特記】 4月13日に録画しておいたドラマW『Go Ape ゴー・エイプ』を観た。これは第1回 WOWOW シナリオ大賞受賞作である。
公園でおやじ狩りに遭った冴えないサラリーマン(岸谷五朗)が、自分を襲った高校生3人に復讐する話である。
ただし、主人公はそもそもパッとしない中年男だし、体力的には明らかにハンディがあるので、暴力勝負ではそう簡単に高校生には勝てない。そこがこの企画のヘソと言うべきリアリズムなのである。
主人公が防犯グッズのセールスマンという設定が面白い。会社からいろんな器具を買ってきて、それを持って高校生たちを襲う。しかし、そう簡単には行かず反撃されて痛い目にも遭う。それでも2人目までは割合上手い具合に運んで雪辱を果たす。
問題は3人目(城田優)である。こいつは公園での時も横で見ていただけで直接手を下してはいない。しかし、見ているだけでなんか腹の立つ存在だった。そして、後をつけていろいろ調べてみると家は裕福だし勉強もできるし、ますます腹の立つガキである。
そして、実際に襲いかかってみたら絵に描いたような返り討ちに遭い、思いっきり不遜な態度でなじられ愚弄され、なおさら許せない存在として凝り固まってしまう。
しかし、そこから先、「意地」だけで岸谷が狂気じみて強くなってくるところが見せ場である。
ただ、後半ちょっとストーリーが壊れちゃったね。せっかく抑制の利いたリアリズムでドラマを始めたのに、それをクライマックスに持って行くためとはいえ、打って変わってここまでリアリズムを捻じ曲げて来られるとさすがに興醒めである。
銃で武装して警察襲撃とか、その襲撃の際に無造作に銃が運転席の横に積んであるとか、殴り合う2人を前にしながら警官を含めて誰ひとり制止しないとか、うん、確かに「そんなことあれば面白いよね」という発想ではあるが、舞台の芝居ならいざ知らず、ここまでごくありきたりに進んできたTVドラマで突然そんな展開になるとやっぱり白けてしまう。
それから名高達男が扮する政治家とか、仕事中に彼女からの電話をしょっちゅう受けている若い刑事とか、いろんな要素/設定を組み込んでストーリーを重層的な構造にしようとしたのも、意気込みは分かるが組み立て切れずにちょい失敗という感じはしたなあ。
なんか如何にも「頭で考えました」という脚本になってしまった。基本的にバイオレンス物なのに「頭で考えました」という設定が載って来て、それが少し居心地の悪いものになってしまった。
まあ、ただ、メインの設定は非常に良かったと思う。
主人公のこういう心理には深く共感できるところがある。いくらなんでもそんなに殴り合ったり撃ち合ったりしたらとっくの昔に死んでるだろ、と突っ込み入れながらではあるが、なんか解る気がしたのも確かではある。
タイトルの go ape は、
- 〈俗〉〔サルのように〕異常に興奮する、取り乱して大騒ぎする、はしゃぎ回る
- 〈俗〉ひどく怒る
- 〈俗〉夢中 になる
- 〈俗〉調子 が狂う
の意。
このシナリオ書いた人、結構洒落た人なんだなあと思った。
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