CX『世にも奇妙な物語 春の特別編』
【4月29日特記】 3月30日に録画したままになっていたCX『世にも奇妙な物語 春の特別編』を漸く観ることができた。
ここのところややパワー・ダウンしたかに思われたこのシリーズだが、今回は比較的出来が良かった。少し戻ってきたかな、という感じ。
ラインナップは以下の通り。
- 『爆弾男のスイッチ』
市原隼人
本郷奏多 ほか - 『クイズ天国 クイズ地獄』
石原良純
遊井亮子 ほか - 『輪廻の村』
伊東美咲 ほか - 『真夜中の殺人者』
相武紗季
鈴木亜美 ほか - 『ボランティア降臨』
大竹しのぶ
高島礼子 ほか
1)は体に小型爆弾が埋め込まれていると言う同級生からその起爆装置のスイッチを預かってくれと頼まれた大学生の話で、残念ながらかなり早い段階で落ちが読めてしまったのが残念だったが、市原隼人(スイッチを預かったほう)と本郷奏多(預けたほう)という意外な組合せがうまく機能していたように思う。
2)は、クイズに正解しないと何もできない世の中になったらという、まことにもってバカバカしい「もしも」モノで、落ち自体はつまらないのだが、石原良純がぴったりすぎる役柄で笑えた。
3)は、これは立派な短編ホラーだ。伊東美咲が扮する新聞記者が匿名の投書に書かれていた過疎の村を訪れる。するとどうやらそこは輪廻の村で、村人たち全員が前世の記憶を持っているという秘密があった、という話である。
去年の秋の特別編の記事でも褒めたのだが、これもまた中村樹基の脚本で、この2本以外の作品を観たことがないのでよく解らないが、正統的なホラー作家として今後もっと活躍する人なのではないだろうか。
さて、1つ飛ばして5)だが、これもよくできた話である。
ある朝、家に頼みもしないボランティアのおばさん・大竹しのぶが現れる。この家の主婦である高島礼子はいきなりの話で困惑するが、姑は足をけがしていて世話が必要だし、自身もパートの仕事を抱えているので結局彼女の助けを借りることにする。
ところが、彼女はたった1日で姑・夫・息子の信頼を勝ち得て、それ以後住み込み状態になって「ボランティア活動」を続けるというもの。
これも中盤以降で結末が読めてしまったのが残念だったが、とにかく大竹しのぶが巧い! そして、大竹がこの正体不明のボランティアの気味悪さを怪演する一方で、それを受けて苛立ちながら不安におののく高島礼子も良かった。
さて、今回のイチ押しは4)である。
タカピーなOL・相武紗季がしつこい同僚・山中崇に「世間をあっと言わせるような何かデカいことができたらつき合ってあげる」とテキトーなことを言ったことが発端になって、その男が彼女の高層マンションを突き止め、管理人を襲って合鍵を奪い、何号室か分からないので上の階から虱潰しに各部屋に侵入して住民を殴り殺して行く、というホラーめいた話である。
が、これが単なるホラーで終わらない。非常に良く練れた脚本で、視聴者は見事に騙されてしまうし、この若いバカ女に対しても、彼女に惚れたバカな男に対しても非常に皮肉の利いた、しかし陰惨でなく、でもほろ苦い結末は巧いとしか言いようがない。
この脚本は佐藤久美子という人のようだ。名前を憶えておこう、と思って調べてみたら、山下敦弘監督の『松ヶ根乱射事件』の共同脚本家だった。大いに納得。
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