ドラマW『戦力外通告』(1)
【3月8日特記】 録画してあったドラマW『戦力外通告』を観た。よくできた話。でも、できすぎた話。
原作は藤田宜永、脚本は矢島正雄、監督は花堂純次(って、誰でしたっけ?)
アパレルメーカーで働く宇津木(中村雅俊)。取締役目前まで行っていたが、社長の急死で風向きが変わり、突然の左遷に遭う。結局冷遇に耐えかねて自ら退職。
それと入れ替わりに、今まで専業主婦一筋だった妻(風吹ジュン)が旅行代理店で働きだして、急に生き生きしてくる。
仕事が見つからないままぶらぶらしているところを中学の同窓生(高田純次)に見つかり、その流れで中学の同窓会にも出席してみたら、みんなそれぞれに悩みを抱えていたり、あがき苦しんでいることがあったり、なんとなく欲求不満だったりする。
年齢的には僕より少しだけ上の世代の話だが、なんだか身につまされる。
で、同級生のひとりは妻に逃げられていたり、製薬会社の専務で順風満帆と思われた別の同級生の会社は潰れてしまい、そのまま彼は失踪してしまったり、と次々にその年代特有の危機に直面する。
自らは昔好き同士だった同級生となんだか焼けぼっくりに火がついた状態になるかと思えば、妻が生き生きしているのは仕事だけのことではなくどうやら浮気をしているらしいことが判ったり、とみんながみんなまずいことになって来て、このドラマどうやって終わるの?と、げっそりしかかって来たのだが、そこから先がいけない。
何がいけないって、ドラマとしてこれは良くない。
ひょんなことから故郷の祭り再興に力を貸すことになった主人公たちが少しずつ「再生」して行くのだが、ま、ひとことで言ってそらぞらしい。
良い話だけど、できすぎ。これだったらあのバツの悪い不完全燃焼の、みんなちょっとずつ不幸なまんまで終わったほうがリアリティが出る。それではあまりに後味が悪いというのは事実だ。しかし、その後味を消すためにこういう展開にしたら、見ている中年たちを勇気づけるのだろうか?
僕はそらぞらしく感じてしまった。僕と同年代の他の人たち、あるいは少し上のこのドラマの登場人物の世代が見たらどう感じたのだろう? あるいは、もっと若い視聴者はどう感じたのだろう?
少なくともこんな単純なことで勇気が湧いてくるほど単純な人生を送ってきていないような気もするのだけれど・・・。
まあ、でも、善意に満ちたドラマではあった。僕もそういう企画意図に対しては何の悪意も覚えない。それだけは確かである。
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