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Saturday, March 07, 2009

映画『ジェネラル・ルージュの凱旋』

【3月7日特記】 映画『ジェネラル・ルージュの凱旋』を観てきた。器用で多作な中村義洋が前作に引き続いて監督。

何と言ってもこの監督の最大の売りは脚本が書けるということだろう。前作の3人から蒔田光治が抜けて、今作では斉藤ひろしとの共同脚本なのだが、今回も本当によく書けている。

東城大学医学部付属病院心療内科・不定愁訴外来医師の田口(竹内結子)と厚生労働省大臣官房秘書課付き技官・白鳥(阿部寛)のコンビも2度目、今回も舞台は同じ病院ということもあって、前回はキャラの説明に少し時間を割く必要があったが、今回はいきなりストーリーに入って行ける。

阿部寛が登場しただけで場内に小さな笑いが起きたし、訳もなく悪寒を感じている竹内結子にも爆笑だった。前作をちゃんと見ている客が多いようだ。作り手と観客との極めて幸せな関係と言える。

田口と白鳥のやり取りが良い意味でパタン化してきているのが微笑ましい。竹内結子はまた少し腕を上げた感じ。ボケ方に磨きがかかったし、シリアスな演技とのメリハリもついている。

院長役の國村隼、不定愁訴外来の看護師役の野際陽子、第一外科部長の平泉成など前作に引き続いての脇役も非常に巧く機能している。

そして今作のために設定されたのが若き救命救急センター長、通称「ジェネラル・ルージュ」の速水(堺雅人)、副センター長の佐藤(山本太郎)、看護師長・花房(羽田美智子)、看護師・如月(貫地谷しほり)、白鳥の元後輩で官僚から病院の事務長に転じた三船(尾美としのり)、医療メーカーの支店長の磯辺(正名僕蔵)などなのだが、この監督らしく、それぞれのキャラが極めて鮮明に描かれている。

ただ、僕が思ったのは、堺雅人って最近ちょっと鼻につくような演技が多いなあ、ということ。

今放送中(と言っても堺の役は死んじゃったけど)のKTVのドラマ『トライアングル』の謎の社長とか、(これは実はほんの短いシーンを見ただけなのだが)NHK大河ドラマ『篤姫』の徳川家定とか、あるいはこの「ジェネラル・ルージュ」の役のような、ちょっとエキセントリックだったりカリスマだったり徳の高い人物だったりの役柄をやらせるのは、僕はあまり感心しない。

『アフタースクール』とか『ジャージの二人』とか、もっと言えば『SUKIYAKI WESTERN ジャンゴ』に出てくるちょっと間抜けな若侍くらいがちょうど合っているよな気がする。むしろ「そこら辺の兄ちゃん」という役柄でこそ活きてくる役者のような気がするのである。

この映画では正義感が強く、しかし横暴で、でも極めて有能な外科医である上に、(これは原作によるのか映画のオリジナルか知らないが)常にチュッパチャップスを舐めているという異様な設定にしてしまって、いよいよ堺の演技が鼻についてしまった。

しかも、堺のライバル役の医師として出演しているのが、決定的に類型的な演技しかしない高嶋政伸である。これではこの2人の類型合戦みたいになってしまうのが、なんだかなあという気がした。

とは言え、(ネタバレになるので詳しく書かないが)小さなエピソードにまで順番にオチをつけて行く脚本がめちゃくちゃ巧いので、飽きずに楽しんで見られるのである。

見事に辻褄が合ってくる。そして逆にちゃんと意表を突いてくる。

ただ、このヒューマニズムがちょっとウザいなあ、と思ったのも事実。

もしも救命医療に携わっている人が見たら、中には「そんなきれいごとじゃ済まないんだよ」と怒り出す人もいるかもしれない。しかし、ことが命に係わることなので軽々に「ウザい」などと言いにくいのである。

その辺の構造(こちら側の弱み)を充分承知した上で、「命を救う」というテーマでグイグイ押してくるので、卑怯と言うか、見ていてなおさら胡散臭くなる。

でも、原作者は医者だし、映画を作る上でもちゃんとした医師たちの監修を受けている、──と言うことは、この人たちは本気でこのヒューマニズムを叫んでいるのである!

そんな風に引いてしまうのは僕だけなんだろうか?

でも、帰ってきてパンフを読んでいたら、原作の海堂尊氏のインタビューが載っていて、その中で彼が、

「もちろん、医療について考えてもらえばありがたいですけど、それはあくまで副次的なものです。基本的に物語として面白ければそれでいい」

と語っているのを読んで初めて安心した。ならば原作を読んでみようかという気にも初めてなった。

監督の真意がどうだったのか解らないけど、僕はやっぱり医療現場の惨状を訴えるためではなく、速水という主人公の人物造形のために磨き上げた設定であるという捉え方をした。

だからこそ、ところどころで巧くコメディにして、いなしている。これが効いていると思うのである。

繰り返しになるが、脇が非常に良い。脚本も優れているし、演技者も見事だった。僕はこの映画で初めて(劇場で観ただけでこれが9本目の出演映画だが)貫地谷しほりを良いと思った。とても良い眼をしていた。高嶋政伸の助手を演じた林泰文も良かった。

そして、何よりも光っていたのは羽田美智子。僕がこのブログで何日か前に書いた「スター女優」論で行くと、麻生祐未とかこの人とかは「スターになり損ねた女優」という風にも言えるのかもしれないが、こういう映画を見ると「いやあ、脇でいてくれて良かった」と心から感謝したくなる。

さて、さらなる続編はあるんだろうか? 竹内結子が

「中村監督が撮るのなら、無条件についていきますよ」

と言っているのが非常に印象的。うん、解るなあ、その感じ。

この映画はみんなが面白く見て満足して、見た人は結構脚本を褒めたりするんだけど、でも結局何の映画賞を獲るでもなく、年間ベストテンに顔を出すこともなく、いつしか忘れられる映画であろうと思う。でも、それで良いのだと思う。

出来の良い、良質のエンタテインメントである、と僕は思ったのである(いや、それではダメだ、医療現場の惨状に思いを馳せてみろ!と怒られるたりするのだろうか?)──ちょっと引きながら楽しんだドラマだった。

次作『フィッシュストーリー』にはさらに大きな期待をしている。

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Tracked on Thursday, March 12, 2009 22:48

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