ドラマW『戦力外通告』(2)
【3月10日追記】 見終わって一晩明けてから妻が言う。
「ねえ、私ずっと考えてたんだけど、あのドラマ、脚本か演出がすごく下手だったんじゃない? 描ききれてない部分が多くなかった?」
「え?」てなもんで、その先を聞いてみると、宇津木(中村雅俊)の初恋の相手・晶子(真野響子)が一旦「もう一緒に温泉旅行に行くことは忘れてください」とメールしたのは、宇津木の妻・恵里子(風吹ジュン)がどんな女なのか見に行ったからなのではないか、と言う。
なるほど、そういう話ならドラマに随分深みも出てくる。恵里子に電話するが出てくれなくて途方に暮れている宇津木を遠くから晶子が見ているシーンにも意味合いが増してくるし、晶子が恵里子のバンドを招聘したというラストシーンにもすんなり繋がる。
しかし、時系列的にそれで辻褄が合うのか(そのタイミングで晶子が恵里子を見に行っていたという想定で矛盾しないのか)、ちょっと記憶もあやふやではっきりしない。妻が単に穿った見方をしただけなのかもしれない。
あまり読みたいタイプの小説ではないので原作を当たってみる気もないのだが、もしも原作を読んだ上でこのドラマをご覧になった方がいたら、原作上の真実はどうだったのか教えてほしい。
ただ、妻のような解釈をしない限り、あの「温泉のことは忘れてください」というメールのシーンは未解決のまま放ったらかしである。確かに、そういう作りが目立ったドラマだった。
結局温泉に泊まった宇津木と晶子のシーンが回想で2度ほど出てくるのだが、これもまず回想だと判りにくい編集になっていたし、結局そういうことだった(セックスには至らなかった)という事実を後出しで出してきているのは一種の救いのつもりかもしれないが、却って言い訳がましかったりする。
それから、これも妻の指摘なのだが、恵里子は若い同僚に誘われても最初から本気で相手にしていなかったのであり、そのシーンを後から思い起こすと、恵里子もまた浮気なんぞという気持ちではなく、結局 "Move Over" を演奏したかっただけではないのか、と。そういうところが巧く描き切れていないのだ、と。
うん、そう言われれば確かに。恵里子の振舞いも、若い同僚の振舞いも、些か不可解なまま(なんせ20代の男が50代の女を誘ったのである。でもベッドを共にするようなシーンはなくて、いきなり一緒に演奏するシーンになってしまうのである)終わってしまった。
このあたりは僕の妻の解釈が正解なのかもしれない。
それは視聴者のほうがちゃんと見抜けなかったのだ、という言い方もあるのかもしれないが、しかし、そこはある程度ぼうっと見ていてもしっかり感じさせるくらいでないと、演出としてはまずいと言って良いのではないか。
確かに妻の言うように、あまりちゃんと描き切れていない、不完全燃焼のドラマであったような気はする。この原作を2時間のドラマにするのが無理だったのかな?
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