「キネマ旬報」2月下旬号(2)
【2月8日追記】 一昨年からキネ旬の1-10位の得点を分解してみるという試みをやっている。何人の審査員が平均何点ずつを投じてこの得点が出来上がったのかという分析である。
ご存じでない方のために書いておくと、キネ旬の審査は各審査員(2008年度日本映画の場合は62人──対前年比6名増)が1位と思う作品には10点、2位には9点という具合に総持ち点55点を投じて行く形式である。
統計学的にちゃんと分析するとなると分散をはじいたりするんだろうけど、とりあえず簡便で見た目も解りやすい方法として「人数×平均点」を出してみた。1点以上をつけた審査員の数×その平均点である。
これをこのように分解することによって、多くの人に受けたのか一部の人に高く評価されたのか、その映画によって微妙なばらつきが見えて来る。
今年初めて気がついたのだが、日本インターネット映画大賞でも同じようなことをやっていて、ここでは「思い入れ度ランキング」という名前がついている。この企画、いつからやってたんだろう? まさか僕のこの記事を読んで真似したわけではないだろうな(笑)
さて、計算結果は、
- 『おくりびと』
294点=39名×7.53 - 『ぐるりのこと。』
237点=34名×6.97 - 『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』
195点=30名×6.50 - 『トウキョウソナタ』
193点=29名×6.66 - 『歩いても 歩いても』
182点=29名×6.28 - 『闇の子供たち』
176点=29名×6.07 - 『母べえ』
117点=18名×6.50 - 『クライマーズ・ハイ』
112点=20名×5.60 - 『接吻』
96点=15名×6.40 - 『アフタースクール』
84点=15名×5.60
っちゅうことで、やってみたけど今年はあんまり面白くもなかったですね。『母べえ』と『接吻』の「思い入れ度」が高いということぐらい。
あと、去年の結果と比べると、今年は接戦だったのが判る。でも一昨年ほどの接戦でもなかった。
こうやって改めて眺めてみると、『歩いても 歩いても』の評価がどうしてこんなに低いのか、それがやっぱり理解できない。不思議の一語に尽きる。
表現力という点では『歩いても 歩いても』と『ぐるりのこと。』が双璧だと思ったのだが・・・。まことに人の感受性は多様である。
そのことは今回のキネ旬の個人賞でも感じた。
ちなみに今回の個人賞は各部門ともかなりぶっちぎりである。一番のぶっちぎりは主演男優賞の本木雅弘(2位の堤真一と17票差の22票)。僕はこれには納得する。ただ、本木に主演男優賞をあげればそれで充分であり、『おくりびと』を(ベストテンに入るのはともかく)1位に選ぶ必要はないじゃないか、と思った。
逆に小泉今日子の主演女優賞が解らない。誤解のないように書けば、僕は小泉今日子の大ファンである。ただ、彼女は言わば「雰囲気女優」であって、決して主演女優賞を獲るような女優ではないと思うのだ。
2008年度の主演女優賞は蒼井優で良かったのではないかと僕は思う(ちなみにキネ旬では小泉に13票、蒼井にはわずか4票)。蒼井優に主演女優賞をあげればそれで充分で、何も『百万円と苦虫女』をベスト20に入れる必要はないと思う。
それが僕の感受性である。
他人の感受性を否定したくて書いたつもりはないので、念のため。
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