« Just tumbling | Main | 『ブラザー・サン シスター・ムーン』恩田陸(書評) »

Sunday, February 22, 2009

ドラマW『兄帰る』

【2月22日特記】 WOWOW がまた「ドラマW最新作3週連続放送」をやっている。先週から始まって録画が2本溜まってしまったので、まず1本目の『兄帰る』(2/14放送)を観た。

見終わってから知ったのだが、原作はビッグコミックススペシャル刊の同名の漫画(近藤ようこ著)。なんだかとっても意外な気がした。

監督は深町幸男。正直言って「こりゃまた随分古臭い人を引っ張り出してきたなあ」という感じ。出だしからテンポののろさと言い、出てくるテロップの字体と言い、随分と古ぼけた感じがする。

脚本は筒井ともみ。森田芳光監督の『それから』で出てきたときには少し前衛的な新進脚本家という印象だったのが、最近では少し立ち位置を見失っているような気がする。プロデュースにまで手を出して大失敗の感が残った『ベロニカは死ぬことにした』が記憶に新しい。

主人公は父親の町工場で経理担当をしている真樹子(木村佳乃)。ある日突然、職場の同僚であり婚約者であった功一(高橋和也)が失踪してしまう。失意に暮れた日から3年が過ぎたある日、功一が交通事故で死んだとの連絡が来る。

誰にも失踪の理由は分からないままである。功一の遺品を頼りに、真樹子は功一の妹・弟と一緒に、彼のこの3年間の足跡を辿る──という筋である。

ドラマで婚約者の失踪が扱われる場合は、「何故だか解らない」という困惑ばかりが描かれがちなのだが、そういう大きな問題の前に式場を解約し招待状を撤回するという途轍もなく気の重い作業がある。残された女性にとってはきっと地獄の作業であろう。

ここではそのことがちゃんと描かれている。「棄てられた女」として友だちに馬鹿にされるのではないかと頭を抱える真樹子。いつまでたっても「どうせ私は結婚をドタキャンされた女」と口癖のように言っている真樹子。

このことがどれほどのトラウマになっているかがしっかり描かれている。そして、そのせいなのか、生来のものなのかは別として、真樹子のいかにも女性っぽい性格の悪さ、女性性の消極的な面を随時織り込んで来るあたりはさすがに筒井ともみ、ちょっと甦って来たかという感じさえした。

しかし、2時間かけて見せられるものの結論が結局のところ女性のプライドが満たされる様なのか? そう思うとなんかげっそりする作品だった。

そんな中で、真樹子が現在中途半端な気持ちで交際している大貫(津田寛治)という男が出てくるのだが、津田の名演もあって、この男の不器用で一途な生き方がひとつの救いになっている。

功一の失踪の理由は明らかにされるが、見ていてそれほど共感の得られるものではない。功一の父親がまた失踪しているという複雑な構造にしているのだが、これもまた必要な設定だったのか?という気はする。

ただ、この物語は真樹子の側から見た場合だけではなくて、功一の側から見た時にも、救いを求め、救いを与えようとしていることだけは解る。その意図だけは評価しなければならないと思う。

脇を固める加藤治子や山本學の素晴らしい演技はあるものの、冒頭でも触れたように、ちょっと古めかしい作りもあって、見ていてしんどいドラマであった。

ドラマの中で真樹子の父(石田太郎)が「女の気持は解らない」と何度もひとりごとを言うシーンがあったが、このシーンが一番同感。

つまり、あまり共感の得られるドラマではなかった。むしろ女性が共感するドラマなんだろうか? でも、妻が見たら、きっと僕よりも遥かに強烈な拒否反応を示すだろうなあ。

|

« Just tumbling | Main | 『ブラザー・サン シスター・ムーン』恩田陸(書評) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference ドラマW『兄帰る』:

» ドラマW 『兄帰る』 [『映画な日々』 cinema-days]
ドラマW PM8:00-10:00 3年前に失踪した婚約者の足跡を追う旅。  美人でしっかり者の私が何故捨てられたのか!?  私の事を忘れていなかったという... [Read More]

Tracked on Saturday, February 28, 2009 13:50

« Just tumbling | Main | 『ブラザー・サン シスター・ムーン』恩田陸(書評) »