『おくりびと』のアカデミー賞受賞の報に接して
【2月24日特記】 このブログをよく読んでくれている知人から、「『おくりびと』のアカデミー外国語映画賞受賞に関して何か書いているかと思ったのに・・・」と言われた。
彼女が期待したのはどうやら少し悪意を含んだ、あるいは毒のある、あるいは棘のある文章だったようだ。
しかし、僕は決してあの映画に悪意など持っていない。ただ「おめでとう!良かったね」と祝福するのみである。
確かに、
『おくりびと』が1位に来るとは思いませんでした。確実にベストテンには入るだろうとは思ってましたけど・・・。キネ旬も随分ウェットになったもんだ、というのが正直な思い。
とか、
表現力という点では『歩いても 歩いても』と『ぐるりのこと。』が双璧だと思ったのだが・・・。まことに人の感受性は多様である。
とか書いているが、一方で、
(『おくりびと』を含む5作品がベストテンに選ばれるであろうことについては)まあ、皆さんあまり異論がないところではないかなと思うのだが・・・。
とも書いているし、もうこれ以上いちいち引かないが、この映画を観たときの記事でもかなり褒めているのも事実である。
単に相対的には『歩いても 歩いても』や『ぐるりのこと。』のほうが上だと感じたにすぎない。
あの時の記事にも書いたが、
多分こういう究極の"異文化もの"は海外受けするんだろうなあ
という思いは最初からしていた。
川端康成の『雪国』がノーベル文学賞を受賞したときに似ていると思う。
『雪国』がノーベル文学賞を受賞したからと言って、『雪国』が日本文学の頂点に立つ作品であるとは思わない。しかし、だからと言ってノーベル文学賞の値打ちは些かも下がるものではない。
『おくりびと』がアカデミー外国語映画賞を受賞したからと言って、『おくりびと』が2008年度の日本映画の頂点に立つ映画であることにはならない。しかし、だからと言ってそのことが今回のアカデミー賞受賞の価値を減ずることには全くならない。
価値とはそういう多面的なものであると思う。
さて、こんな記事で彼女は喜んでくれるのだろうか?
★完全な後付けではありますが、この記事は以下のブログからTBさせていただきました。
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