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Sunday, January 11, 2009

映画『悪夢探偵2』

【1月11日特記】 映画『悪夢探偵2』を観てきた。今年1本目の映画。いやあ、年初からえらいもんを観てしまった──と2007年にも同じことを書いている。

今回のほうが評判が高いのでとても楽しみにして行ったのだが映画館はガラガラだった。それにしても僕ともうひとりのおじさん以外、他のお客さんは全員女性とはどういうことなんだろう?

前回は1本目ということで設定の説明に時間を割く必要があったりイメージの固定に汲々としていたりしたのだが、今回は非常にこなれて来た。

特に前回においては、"好演"ではあったと思うのだがどうしても"らしく"見えない女刑事役の hitomi とか、ちょっと個人技/名人芸で周りを喰い過ぎた感のあった"俳優"塚本晋也とか、そういうところでややバランスを欠いたところがあったが、今回はあまり"大きな"役者も起用せずに見事にトータルな印象を残している。

そして、前回はあくまで"メタサイエンス"という形でではあるが少なくとも少しは科学を意識したものであったのに対して、今回は思いっきり伝統的ジャパニーズ・ホラーの手法に寄っかかってきた。

それが怖いのなんの! まぢ、こえーっ!

前作『悪夢探偵』で他人の悪夢に入り込む能力で事件を解決した影沼京一(松田龍平)のところに女子高生・雪絵(三浦由衣)が訪ねてくる。同級生の菊川(韓英恵)が異常な怖がりなのが面白くて、友だちと一緒になっていじめたら、以来菊川の悪夢を見てもう何晩も眠れないと言う。

そして、影沼につれなくされているうちに、雪絵と一緒になって菊川をいじめていた友だちが次々と"悪夢の餌食"になって行く。

影沼は、前作と同じく「ああ、いやだ、いやだ」という独り言が口癖で、人助けのために死ぬ思いをして他人の悪夢に入り込むつもりはさらさらない。それどころか、彼はここ何日も自分の母親(市川実和子)の悪夢に悩まされていた。

何故だか解らないがあらゆるものを怖がり、息子の京一をさえ怖がった挙句に浴槽に沈めて殺そうとした母親。そして首を吊って死んでしまった母親。

ここで菊川のイメージと母親のイメージが重なってくる。

何と言っても怖いのは横倒しになって迫ってくる母親──僕は生涯見た映像の中で『リング』の貞子が一番怖かったが、それに迫るものがある。そして、いつまでも後ろ姿しか映されず顔が見えない菊川も怖い。その菊川が、顔を見せないまま超高速・後ずさりで迫ってくる恐ろしさ。

登場人物たちが、あるいは観客たちが怖いと思っている菊川と影沼の母親が、ともに怖がらそうという意識なんて微塵もなくて、それどころか自分たちのほうこそ死ぬほど怖がっている──「怖い、怖い」と言いながら迫ってくるこの怖さ! 夢見るぞ!

前回同様、一般的には固定カメラを使うところをハンディで押し切って、もちろんわざとなのだが、画面が揺れる揺れる。で、本当に怖い画はほんの10フレームぐらいしか映らない。そこが怖いのである。

で、この結末がまた、影沼が自ら「ほとんどの場合は解決なんかしないんだ」と言っている通り、依頼に来た雪絵にとってみたら、こんなことで良いのかどうか?

死なずに済んだのは喜べるとして、こんなことになってしまうぐらいなら死んだほうが良かったかもときっと思うだろうなあというような結末で、うーむ、人間というものは何かと周りと折り合いをつけながら生きて行くしかないんだなあ、としみじみ思ってしまった。

パンフにいろんな人のコメントが掲載されているのだが、その中でも小川洋子の文章が秀逸である。全文を引用したいところなのだが、長いし、それもあんまりなので最後の2行だけにする。

絶望の果てに救いが訪れるのではない。それらは常に共存しているのだ、というすさまじい真理をあぶり出した映画である。

こういうのを読むと、映画にしても小説にしても、作った側のセンスや力量が試されるだけではなく、見たり読んだりした人の"読みとる力"も試されているんだなあと思う。

とにかく怖いだけではない。深い深い映画であった。

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

アロハ坊主の日がな一日

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