映画『プライド』
【1月18日特記】 映画『プライド』を観てきた。
金子修介監督の新作ということ以外はほとんど何も知らずに見に行ったのだが、実は一条ゆかりの人気漫画の映画化らしい。
僕は一条ゆかりと一条さゆりと、どっちが少女漫画界の重鎮でどっちが伝説のストリッパーだったか区別がつかなくなるぐらいだから、原作のことは何も知らない。でも、結構有名な作品らしい。場内は女性客で満員だ。
満員なのは舞台挨拶があったせいでもある。ステファニーと満島ひかりと金子監督。
ステファニーは『君がいる限り』で歌手デビューした際に、あの超高音を含む音域の広さに度肝を抜かれた記憶がある。役どころからして、その歌唱力を買われての役者デビューである。
しかし、至近距離で見て「意外に大きいなあ」と思い、映画本編を観てさらにデカ女の印象が強くなった。体もデカイが乳もデカイ。顔もデカイ。いや、とりたてて一般人より顔がデカいということではなく、隣に並んだ満島ひかりの顔が小さすぎるのだ。
その満島ひかりが激カワで息が止まりそうになった。画面で見るより実物のほうが遥かに可愛い。中学時代に好きだった福沢礼子さんのことを思い出した(って、誰にも解らんか)。ともかくめちゃくちゃ可愛い! んで、顔ちっちゃい!
満島ひかりは最近名前をよく目にする女優だ。この後も園子温監督の『愛のむきだし』が控えている。同じ金子修介が監督した『デスノート』シリーズでは藤原竜也の妹役だったと言うのだけれどあまり印象がないなあ、と思っていたら、映画が始まって最初のシーンでおさげ髪で画面に登場した途端に、「あ、そうそう、この子だった」と思い出した。
前回が幼い役柄だったのに比べて、今回の役柄と言い、舞台挨拶での大人っぽい装いと言い、ギャップが大きかったのだ。
金子監督は『デスノート』の前にも何かの作品で満島を使っているらしく、今回も監督の推薦でキャスティングされたとあり、まさに金子監督の秘蔵っ子と言って良いだろう。これが見事に当たった。
オペラ歌手を目指す2人の少女の物語である。
ひとりは今は亡き有名なオペラ歌手を母に持ち、大邸宅に住み、名門音楽大学に通う麻見史緒(ステファニー)。もうひとりは貧乏な家庭に生まれ、飲んだくれの母親に育てられ、それでもなんとか2流音大に通っている緑川萌(満島ひかり)。この2人が強烈なライバル関係にある。
そして、その設定に加えて、大手レコード会社副社長の神野隆(及川光博)と音大ピアノ学科の学生の池之端蘭丸(渡辺大)という2人の男性が絡むことによって、音楽だけではなく「恋愛をめぐるライバル関係」、そして「仕事と恋愛」というテーマが付け加わる。
父親の会社が倒産して一気にお嬢様暮らしから転落することになるのだが、何があっても自分のプライドを失わずに生きようとする史緒。それに対して、闘争心剥き出しでプライドなんかかなぐり捨てて、何が何でも貧乏から這い上がり、男の愛も獲得しようとする萌。
──この2人の対照が徹底的で面白い。大体こういう対比では金持ちお嬢様のほうが性悪娘というのがパタンだが、この話では萌のほうが手段を選ばない女で、えげつなく性格が悪いという設定が面白い。この悪女ぶりがもう全くマンガなのだが、原作がマンガだからこれで良いのである。
これは僕らTV業界の人間に説明するとしたら「東海テレビのどろどろ昼メロ路線」と形容するのが一番分かりやすい。
萌の表情が一瞬でころっと豹変するのが面白くて、もう笑うしかない。大げさなんだけど、これは意図的な演出で、その演出に乗った本当に見事な演技である。日本アカデミー賞級の名演(笑)である。
満島ひかりは化けるよ。いや、もう大化けしている。どうすれば憎たらしいか、どうすれば可愛いか、それが本当によく分かっている。今後が本当に楽しみな女優だ。
そして、金子修介監督=高間賢治撮影監督のコンビが、すごくわざとらしいカメラを回すのである。ともかく寄る。一気に寄る。さっきまで2ショットで撮ってたのに、突然正面からの1ショットに切り替えて、猛然と寄るのである。時々はそこに独白の台詞がかぶる。
僕が金子監督を好きなのはこういうけれん味のせいではないかなか、と思う。日常の世界では「けれん味がない」という成句で褒め言葉に使われることが多いが、芝居や映画の世界では「けれん味たっぷり」というのも代表的な褒め言葉である。
で、この映画の魅力はそこに留まらない。──何かと言えば、それは音楽。音楽監督は清水信之がやってるんだけど、これは音楽映画として見ても本当に素晴らしい。
劇中に2回あるステファニーと満島のデュエットはさぶいぼ物である。
ステファニーの巧さはまあ、既知のものとして、彼女の主旋律にハーモニーで絡んでくる満島の、この素人離れした歌唱力は一体何なんだ!と唖然としたのだが、パンフを読んでみたら、何と彼女「フォルダー5」のメンバーだったんですね。これが今回の一番の驚き。
僕は中音域がしっかりして張りがあり、加えてややセクシーな感じもする、こういう女性の声質が大好きなのである。コーラス・アレンジがまた逸品です。帰りに売店でCD買おうかと思ったくらい。
オペラ部分は、さすがにああいう発声が短期間で養成できるはずがなく、口も少しずれていたので「あ、ここは吹き替えなのか」と思ったのだけれど、口パクに しては満島の肉体の動きに躍動感がありすぎると思ったら、2人ともしっかり練習を積んだ上で本番では声を出して歌っており、その上で吹き替えたものらし い。──こういう気遣いもしっかりと映画の血肉になっている。
話は確かにマンガである。でも、最高に面白い漫画だった。そして、満島ひかり恐るべし──今回の感想はここに尽きる気がする。
★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。
Comments
こんにちは、初めまして。
私も最高に面白かったです。
満島ひかり恐るべし!
本当にこの映画はそれに尽きますよね。
「愛のむきだし」も期待大ですね(o^-^o)
Posted by: 咲太郎 | Monday, January 26, 2009 16:32