映画『K-20 怪人二十面相・伝』2
【12月23日追記】 書き落としたことをいくつか書き足しておく。
パンフを読むと、佐藤嗣麻子監督が如何に肩から力を抜いて楽しんで撮っていたかということが伝わってくる。
「(怪人二十面相の)"縄梯子と高笑い"はやっておかなければいけないと思って入れました」などという証言も映画を見た後から読むと非常におかしい。何故って、このシーンでは縄梯子にぶら下がった偽二十面相・平吉(金城武)が「ハイ、笑って」と促されて高笑いするのである。
こういうユーモアのセンスって良いなあと思う。平吉が鳩を愛するという設定も、ニコラス・テスラ博士+秘密結社鷹の爪団の吉田君の合わせ技とは、なんという感覚の持ち主かと笑えてくる。
そんな感じが画面の裏から匂い立ってくる感じの映画なのである。
そして、もう1点。
この映画の初めのほうに、ウェディングドレスの衣装合わせをしていた葉子(松たか子)が突然二十面相(鹿賀丈史)に追われて街を走って逃げるシーンがある。このシーンに関して、佐藤監督はこんなことを言っている。
ウェディングドレスで走ってる女の人って綺麗だろうと思って。それを後ろから追いかける映像が撮りたかったんです。
男性からは出てこない発想だ。後ろからというのがミソだ。
そして、ストーリーありきではなく、撮りたいシーンに合わせて脚本をしつらえたこと──これは映画作りの発想として、とても正しいと思う。
何故ならば、映画は第一義的に映像作品だからである。
この映画は特撮部分が大掛かりだから、監督が実際どこまで細かく指示を出していたかは分からない。多分多くのスタッフに助けられた、と言うか、かなりの集団作業であったことは間違いない。
でも、佐藤嗣麻子監督は初めからちゃんと撮りたい画が頭の中にあったんだろうな。そんな気がする監督だ。やっぱりこれは紛れもない佐藤嗣麻子監督作品だな、と思う。
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