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Tuesday, November 04, 2008

ただ残念

【11月4日特記】 小室哲哉が逮捕された。こういう時に僕がついつい思ってしまうのは、作品のリリースに影響が出なければ良いのになあ、ということだ。

事実今回も、新聞報道によると、すでにCDの発売が中止になったということである。

ま、僕も同じような業界にいるので、中止する側の心理も充分に解る。発売を強行した時に寄せられるであろうヒステリックな抗議に対応することを考えると心が萎えてしまう。とりあえずは発売中止、当面は延期、あるいは放送自粛、等々、どうしてもそういう決定をしてしまうのだ。

ただし、音楽でも絵画でも文学でも映画でも全ての作品の価値はその作者が何者であるかということとは関係がないとも思うのである。どんな極悪非道の人間が作者であっても、名曲は名曲だし名画は名画であると思うのである。スポーツ選手の記録も同じ。犯罪者になったからと言って記録が記録でなくなるとは思わない。

若い世代では、もはや小室哲哉が何者なのか知らない人も多いらしいが、やっぱり小室哲哉というのは時代を代表する天才だったと僕は思うし、そういう人の作品は聴きたい時に聴きたいものだと思うのである。

その一方で「罪を犯した者は社会的な制裁を受けてしかるべきである」という理屈も全く解らないではない。ただ、犯罪者の作品を発売した/放送したと言って抗議してくる人の気持ちは、残念ながら僕には全く理解できないのである。

「詐欺師の肩を持つつもりか!」などと責められても、「うーん、そんな風に言われてもなあ・・・」としか答えられないのである。鑑賞する側の立場に立つと、やっぱり誰の作品であれいつでも自由に観たり聴いたり買ったりできる状態にあるのが望ましいと思ってしまうのである。

「そんな人だったのかと思うと一気に興醒めしてしまう」というようなことも僕にはない。もちろん直接の知り合いであり、かつ、自分が被害者であったような場合はそういう気持ちにもなるかもしれないが、しかし、そういう時でも多分僕は自分のそういう気持を無理やりにでも否定して、作品は作品として評価しようと心掛けるだろうと思う。

まあ、ただ、そんなこととは関係なくCDを発売しろという趣旨でこの文章を書いているわけではない。正直、まあ、出せないかな、仕方がないかな、という思いはある。

ただ、残念だなあ、という、ただそれだけの気持ちである。

年収が30億円あったころに、どうして3億円だけ取り分けておこうと思わなかったんだろうか。馬鹿だなあと思うよりも、やっぱり、ただ残念だなあと思うのである。

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Comments

こんばんは。
当人が活動を自粛するのはいいとしても、アーティストが逮捕されるとその作品が販売中止になっていくという一連の傾向、いつも不思議に感じられます。音楽業界の人たちもアーティスト個人の行動と作品としての評価は別に考えてほしいのですが、これは日本独特の「けじめ」とか「みそぎ」の心理なのでしょうか(海外では今回のようなケースではどう対処しているのかも気になりました)。

Posted by: | Wednesday, November 05, 2008 00:03

> 狗山椀太郎さん
どーも。仰る通り、きっときわめて日本的な現象なんでしょうね。その後もFM局での放送自粛(しかも作曲だけではなくプロデュース作品まで!)が続いたりしていますね。ただねえ、この手のクレーム電話を自分で受けたことがある人なら、やっぱり発売や放送を自粛したくなるんですよね、哀しいかな。

Posted by: yama_eigh | Thursday, November 06, 2008 22:42

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