映画『ホームレス中学生』
【11月8日特記】 映画『ホームレス中学生』を観てきた。
誰のブログであったのか憶えていないのだが、よく読ませてもらうブログの映画評を読んでいたら、「監督で映画を選ぶなんてめったにしないことだ」という記述にぶつかって、そんな人もいるのかと大いに驚いた。
僕は監督で選ぶのが基本だ。
もちろん好きな監督の作品しか見ない訳ではない(そんなことしていたら新人監督の作品を見ることができない)。気に入った監督の次回作は必ず見るというものではない(そんなことしてたら見なければならない映画の数がどんどん増えて行く)。ただ、大抵は「あの監督の作品なら見てみよう」というのが直接の動機である。
この映画を観たのも古厩智之監督であったからだ。『さよならみどりちゃん』、『奈緒子』と、ここのところ3本続けて観ている。
ただ、あまりに単純な設定なので2時間を構成するのは少し難しいかも、と思ったのだが、その予想はほぼ当たってしまった。
途中ちょっと飽きてくる。話に伏線がなさすぎるからだ。でも、やはり監督の才気というものはあちこちに感じられる。
裕(小池徹平)の母(古手川祐子)の死期が迫ったとき、裕の肩越しに捉えられる病院の暗い踊り場で立ち尽くす父(イッセー尾形)の姿──あの画はすごかった。
ホームレスになった兄姉弟3人が久しぶりに裕の親友・よしや(柄本時生)の家で夕食を御馳走になったとき、画は嬉しくて泣いている姉・幸子(池脇千鶴)をワンショットで抜いたままにしておきながら、背後でよしやの両親(宇崎竜童・田中裕子)と兄・研一(西野亮廣)の会話(「当り前だのクラッカーって何ですか」「てなもんやや」「餡掛けの時次郎や」)を流している──あれは幸子の心を中心とした描写で、とんでもないリアリティがあった。
でも、トータルとしては少し物足りない。映画館で隣に座ったおばさんは泣いてたけど。
小池・西野・池脇・田中裕子のほかにもいしだあゆみ・黒谷友香・徳永えりという、大阪弁を淀みなく話せる関西出身の役者を揃え、柄本時生・徳永えりという若手ながら実力のある役者に加えて紅萬子・笑福亭松之助・キダタローという関西ではお馴染みのタレントが脇を固め、後藤法子と古厩の共同脚本も単調なストーリーに精一杯の味付けを利かせており、まあ、悪い映画ではなかった。
終盤自転車で走る辺りは計算通りの盛り上がりに持ってきてるし、フラッシュバックの回想シーンの重ね方なんて本当にテクニックを感じさせてくれた。
でも、何よりも、尾形イッセーと池脇千鶴の、もう他の役者とは桁違いの巧さが一番印象に残る映画だった。
★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。
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