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Sunday, November 30, 2008

映画『みんな、はじめはコドモだった』

【11月30日特記】 The ショートフィルムズ『みんな、はじめはコドモだった』を観てきた。

そもそもこの映画は大阪の朝日放送(ABC)が新社屋完成記念事業の一環として製作し、7月にABCホールで無料招待上映されたものだ。

僕はABCの新社屋移転前から狙っていて、ま、ABCの誰かに頼めば間違いなく切符は取れたと思うのだが一応ちゃんと Web 上で無料招待上映会に応募したのである。

で、当落の連絡がかなりギリギリになったということもあるのだが、結局いつの日付で申し込んだのかを忘れてしまい、第1希望日で当選の連絡が来た時には既に別の予定が入っていたのである──しかも、皮肉なことに、その予定というのは「ABCの新社屋を見学させてもらってその後一緒に飲もう」という企画だった。

で、僕は仕方なくこれから上映会が始まる会場を見せてもらっだけで、作品は見ず終いになってしまった。

でも、その後この映画の一般公開が決まり、おかげで先日オープンしたばかりの"西宮ガーデンズ"に行くことができた。僕が生まれて初めてプロ野球を観た西宮球場とその周辺をぶっこわして建てられた一大ショッピングセンターである。TOHOシネマズ西宮OS はその5階にあった。イメージを統一しているので他の東宝直営館とそっくりである。

さて、西宮ガーデンズについてはこの後の記事で書くとして、まずはこの映画について書くことにする。

これは5人の監督によるオムニバスである。1本平均20分弱。タイトルから判るように「コドモ」が共通テーマに据えられているようだがこの規制は結構緩く、「大人」に対する「子供」だけではなく「親」に対する「子供」を扱ったものもある。

それはそれで、まあ良いんだけど、ただこのタイトルからすればやっぱり誰かの子供時代が出てこないと嘘になると思う。そういう意味ではそういう色合いが一番薄かった崔洋一監督の作品はちょっとインチキだな、と思った。

個別の内容は下記の通り。

  1. 『展望台』阪本順二監督・脚本、佐藤浩市・小林勇一郎ほか出演、
    椎井有紀子P、制作プロダクション:キノ
  2. 『TO THE FUTURE』井筒和幸監督羽原大介・吉田康弘脚本
    光石研ほか出演、祷映P、制作プロダクション:シネカノン
  3. 『イエスタデイワンスモア』大森一樹監督・脚本
    高岡早紀・佐藤隆太ほか出演、妹尾啓太・下戸聡P、
    制作プロダクション:東映京都撮影所
  4. 『タガタメ』李相日監督・脚本、藤竜也・宮藤官九郎ほか出演、
    齊藤有希・松原恵美子P、制作プロダクション:オフィス・シロウズ
  5. 『ダイコン~ダイニングテーブルのコンテンポラリー崔洋一監督・脚本
    小泉今日子・樹木希林・細野晴臣・山本浩司ほか出演、
    東島真一郎P、制作プロダクション:ビーワイルド

こういう短い作品になるとあまり手の込んだ仕掛けはできない。勢い、発想と台詞廻しの勝負になってしまうものである。

そういう意味で一番しんどかったのは1)である。営業終了後の通天閣展望台に閉じ込められた中年男と小学生のワン・シチュエーション・ドラマ。

自殺しようとしている中年男と親に捨てられた小学生の話だが、小学生の男の子をダシに中年男を描こうという魂胆が見え見えになってしまった。画もきれいで台詞も良かったけど行く末が透けて見えるところがちょっと・・・。良い話ではあったけどね。

その点2)はストーリーを破綻させてブッツリ終わるところが良い。光石研が演ずるイッてしまってる教師と小学生たちの話。羽原大介にもこんな脚本が書けるのかと驚くほど破壊的で予定調和がない。

いやあ、井筒監督、ワイドショーに出てる間に錆びついたりはしてなかったんだ、と嬉しくなる。光石の怪演が光った。

3)は唯一の時代劇。日本映画ではお馴染みの独立系のプロダクションが並ぶ中で、これは東映京都撮影所である。浦島太郎の玉手箱の煙で一気に青年になってしまった子供が母親の居酒屋を手伝うという奇想天外な設定だが、作りとしては一番オーソドックスで、筋運びもしっかりしていて面白い。安心して見られる。

1980年代に7本、1990年に最後の1本を映画館で見て以来ご無沙汰になっていた大森一樹監督だが、いつの間にこんな大御所然とした監督になっていたのだろう、と素直に驚いた。

続く4)では「子供」が「大人」である。川屋せっちんが扮するのが藤竜也の37歳の息子。だが、知的障害がある。その設定によってこの共通タイトルとの整合性は取れる。

藤竜也が肺癌で余命3ヶ月と医者から告知される。しかし、息子を残して死ぬ訳には行かない。どうして良いか判らないところへ宮藤官九郎が演ずる「死神」が現れて、以降ずっと藤につきまとうようになる。

これもよくできた話。宮藤官九郎ってこんなに巧かったっけ?と少し驚いた。ただ、最後のシーンはちょっと芸がなかったなあ。もう少しサプライズがあるのかと思っていたら何もなかった。まあ、親の情愛ってそんなもんか?

そして最後の5)。なんか突然ケージツっぽい映画になる──設定も台詞も画作りも展開も。

細野晴臣と樹木希林の夫婦、その娘の小泉今日子、と別居中の夫・山本浩司、そして彼ら夫婦の一人息子という3代の話。しっかりとまとまった構成で、見事な雰囲気を醸し出している。希望があるようでないようで、日常というものの温かさと酷さと言うか・・・。

さて全体をまとめると5人5様で面白かった。初めて見る監督はひとりもいなかったのだが、なんか普段と違ってる感じの監督もいて、それもまた面白かった。

ただし、映画館はガラガラ。でも、こういう碌に儲けにもならないことをやるABCって、ある意味偉いよね。

それから、小学生の子供連れで見に来てた夫婦がいたけど、この映画はどうだったんだろう? 子供に見られたら恥ずかしい大人の話が多かったので、お父さんとお母さんは随分ばつが悪い思いをしたんじゃないだろうか?

★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。

ラムの大通り

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Comments

はじめまして。TBしたものです。
「みんな、はじめはコドモだった」の仔細を参照、引用させていただきました。
ご了承いただけましたら、幸いです。

Posted by: largo | Sunday, December 20, 2009 at 00:50

> largo さん
どうも。お役に立って何よりですw ただ、TB頂いた形跡はないんですけど…?

Posted by: yama_eigh | Sunday, December 20, 2009 at 10:29

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