検証:大阪弁(映画『ホームレス中学生』その2)
【11月9日追記】 昨日観た映画『ホームレス中学生』のパンフレットの中で、宇崎竜童がインタビューに答えてこんなことを言っている。
僕もプロフィールでは京都出身となってはいるんですけど、実際は生まれてから2カ月しか京都にいなかったんです。だから、監督がその事実を知った時はキャスティングを失敗したと、悔いたと思います。
でも、僕は古厩智之監督は決して失敗したと後悔したりはしなかったと思う。何故なら長崎県生まれで日大芸術学部出身の監督には、その大阪弁の違いは決して聞き分けられなかったはずだから。
宇崎はこう続けている。
もちろん、関西の方が聞いても不自然に聞こえないようにそこはしっかりと稽古していきました。それは僕の責任ですから。
確かによく練習したと思う。不自然に聞こえたとか違和感を覚えたとか言うつもりはない。ただ、僕には彼が関西出身でないということがはっきりと判った。違いをちゃんと聞きわけてしまったのである。
関西出身者なら多分同感だろう。関西出身者でなければ俄かに信じられないかもしれない。しかし、そういうことはどこの方言にもあるはずで、たとえばあなたが秋田県出身なら、他の地方の出身者がいくら上手に秋田弁を真似しても、そこにある微妙な違いに気がつくだろう。
今回の映画では兄姉弟を演じた西野亮廣・池脇千鶴・小池徹平が3人とも関西出身であることは一耳瞭然である。そして、3人の中でも特に大阪っぽい感じをよく出していたのが池脇だと思う。隣のおばちゃん役の紅萬子と並んで、いかにも大阪の女たちが喋りそうなまったりと粘っていながらスピード感のある喋りだったと思う。
父親役のイッセー尾形は明らかに関西出身ではない。この人の大阪弁のイントネーションが全出演者の中で一番変だった。なのにあまり違和感を覚えさせないのは存在感と演技力のなせる業である。
母親役の古手川祐子もちょっと違うなあと思ったら、やっぱり大分県出身。それに比べて担任教師役の黒谷友香は非常に滑らかな大阪のイントネーションで、これは関西の生まれ育ちに間違いない。
宇崎竜童の奥さん役の田中裕子も間違いなく関西出身の喋りである(まあ、この人が関西出身なのは知ってたけど)。
小池徹平に恋する中学生を演じた徳永えりも、知らなかったけど間違いなく生粋の関西人だ(しかし、この子も徐々に売れてきたねえ。僕は映画館で観るのは6本目なんだけど、先週はTBS『流星の絆』にも出てたし。嬉しい限りである)。
あと、いしだあゆみや笑福亭松之助、キダ・タローが関西出身であることは誰でも知っている。
柄本時生は違う。やっぱり少し変な大阪弁をしゃべっていた。
しかし、僕は「だから他府県出身者が大阪のドラマをやったりすると興醒めする」というようなことが言いたくてこんなことを書いているのではない。むしろその逆である。
他府県出身者であるということはほぼ100%見抜いてはいたけれど、それが鑑賞の邪魔になるようなことは全くなかったということである。中にはそういうことが気になって、気持ち悪くて見ていられないドラマもあると言うのに、これは非常に珍しいことだと思う。
各役者の大阪弁習得の努力の賜であり、かつ、演技力の大きさだと思う。
尾形イッセーも宇崎竜童も柄本時生も──本当に芸達者な役者たちに支えられた映画だと思った。あとはストーリーやね。
Comments
「芸能ファンブログ大集合」と申します。すばらしく充実したこのサイトを、ぜひとも当方のブログで紹介させていただきたく、お願いに上がりました。一度ご確認いただければ幸いに存じます。
Posted by: えいじ | Monday, November 10, 2008 22:45