邦画と外画の境界線
【10月26日特記】 洋画と邦画ってどこで区別するんでしょう? 何を馬鹿なことをと思われるかもしれませんが、一番最近見た映画『TOKYO!』は洋画なのか邦画なのか考え始めたら分からなくなってしまいました。
私は Microsoft Access で自分が観賞した映画のデータベースを構築しています。そこでクエリを組んで、今年観た邦画は何本とか、去年観た外画は何本とか、生涯で観た邦画/外画はそれぞれ何本などという計算をさせています。
しかし、私のデータベースのフォームには邦画/外画の別を記入するコントロールはありません。
では、どうやって計算しているかと言えば「原題」欄が空欄であれば「邦画」として、「原題」欄に何か値が入っていれば「外画」として集計するように作ってあるのです。邦画の場合はタイトル=原題だから、「原題」欄には何も書きこまないというわけです。
現在『TOKYO!』のレコードにおいては「原題」欄は空欄です。従って『TOKYO!』は邦画ということになっていますが、これは非常に恣意的な運用を許すシステムであり、私が「原題」欄に「TOKYO!」と書き込んだ途端にこのオムニバス映画は外画ということになってしまいます。
確かに3人の外国人が作った映画であることを考えると、この映画の原題は"TOKYO!"であり、その邦題が『TOKYO!』であると考えてもちっともおかしくはないのです。
では、根本的な区別はどうつければ良いのでしょうか?
そもそも世の中がこれだけ国際的になってきて、映画の作り方にしても1つの映画会社が全製作費を工面してという形式よりも、所謂「製作委員会方式」という寄ってたかってスタイルが定着してくると、洋画だとか邦画だとか言ってる方がバカバカしい気もします。
しかし、その一方で、賞やランキングの場合、やはりそれらは外国映画と日本映画という形に整理され分離されるのが一般的です。そのほうが映画を評価しようとするときの生理/心理に合致しているのではないでしょうか。
では、何を基準に分けるか?
映画のパンフレットを買うと、「フランス映画」とか「香港映画」などと書いてある場合があります。「日本映画」と書いてあることは滅多にありませんが、例えば「角川映画」などと書いてあればそれは日本映画です。──それを採用するというのがまず一番安易な手。でも、そういう単純なケースはわざわざクレジットを読まなくても悩まないことのほうが多いんですよね。
では、日米合作とか日韓合作とかの場合はどう判断するのか?
法律上の問題であれば多分出資比率の多いほうということになるのでしょうが、それを映画に当てはめるのはどうも無理やりという気がします。それに50%ずつの出資であれば一国に決めようがありません。
となると、喋っている言語でしょうか?
ほぼ全編にわたって台詞が日本語であれば、それは日本映画──これは分かりやすいルールです。ただし、英語の場合は多くの国の公用語であるだけに面倒ですが・・・。それ以外の場合は、この方法に沿ってやるとあまり迷わずに済みます。台詞が英語のときには結局出資者(社)の国籍を調べるしかないでしょう。
ただ、その方法でもすっきりしないケースはあります。
最近の例では、2006年4月に観た『Big River』を私は「邦画」に分類しました。この映画は全編英語です。舞台となっているのはアメリカ合衆国で、出演者も2人を除いて全員アメリカ人です(もちろん国籍や出身地をちゃんと調べればそうでない役者も含まれているかもしれませんが)。
ただ、主演のオダギリジョーだけが日本人なんです(もうひとり重要な役でパキスタン人が登場しますが)。そして脚本・監督を務めたのも日本人の舩橋淳です(台詞が英語だけに、アメリカ人との共同脚本になってはいますが)。
こうなるとやっぱり日本映画という気がしました。
種明かしをすると、この映画は東京テアトルとオフィス北野の共同出資であり、パンフやホームページにもちゃんと「日本映画」と記してありました。
さてさて、以上いろんなことを考えてみると、やっぱり『TOKYO!』は「邦画」で良いように思います。
出資の関係でみると日=仏=独=韓共同ということになるのでしょうが、舞台は日本だし、俳優もほとんど日本人だし、監督以外のスタッフもほとんど日本人だし、2本目の<メルド>以外は全編日本語だし・・・。
<メルド>だけは主演2人がフランス人だし、言葉も日本語とフランス語が使われているけど、それよりも一体何語だか解らない言葉が一番多く語られているし、まあ、3本のうちでは毛色が違うのですが、でもこのオムニバス映画トータルとしてはやはり日本映画でしょう。
つまり、結論めいたことを書くと、それはどこで企画されたかということに依るのだと思います。「どこで企画されたか」などと言うと実は結構曖昧なことになってしまう場合もあるでしょうが、この映画の場合は間違いなく日本で企画され、その企画に海外の3監督が乗ったという風に考えて良いのではないでしょうか。
そうなると指標はプロデューサの国籍か?
うむ、確かにこの映画のプロデューサ陣はほとんど日本人だけど、それで割り切るのもちょっとなあというケースもあるでしょうね。
本当に難しいです。そして、分けてどうなるというわけでもなし。でも、こういうのを分けたがるところが、なんか私も結局日本人なんだなあという気がしています。
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